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2004/03/20

InterCommunication No.48 Spring

 『InterCommunication』No.48 Spring(NTT出版, 2004)の特集「大学 21世紀の知のシステム」を読了。通巻だと49号なのか……差が出た1号は何だろう、と余計なことが気になってしまうが、それは置いておく。
 いち押しは稲葉振一郎黒木玄「対談 いかにして自分(と世の中)を変えるか 教養について」。黒木玄という名は「黒木玄のウェブサイト」に設置された「黒木のなんでも掲示板」(そういえば最近、ほとんど見ていないなあ)の主宰者として、ぼんやりと頭に入っていたので、表紙に名前を見つけて、おお、という感じ。対談中でも、「2ちゃんねる登場以前の一つのモデル」として、「なんでも掲示板」が取り上げられている。黒木氏の「ネットで掲示板を始めた当時僕が非常に嬉しかったのは、世の中に小難しい話を普通に面白がってくれる人がものすごくたくさんいるということなんです」という発言から、掲示板開始当初の昂揚した気分が伝わってきて、ぐっとくる。
 巻頭の生駒俊明・橋爪大三郎「日本の大学は変わることができるか グローバル化の中で考える大学の原点」が、「こうすべきだ」「いや、ああすべきではないか」式なのに対して、稲葉・黒木対談は、明確なロードマップを示すこともないし、「こうあるべきだ」という像を示すわけでもない。互いに、手探りでの模索の過程を報告し、分析しあっている感じがある。それでも、自分たちの限界をある程度見据えた上で語っている分、稲葉・黒木対談の方が、より、これからの「知」のあり方という問題に寄り添っている感じがする。
 この他、NPO法人サイエンス・コミュニケーション副理事の林衛「『学術研究』が支持される理由 理化学研究所とソニーCSLから見た日本の科学五十年史」は、戦前の理化学研究所と現在のソニーCSLの両者について語りつつ、社会が学術研究を支えるというのはどういうことなのかを語っている。市民・科学者コミュニティ・政府・産業界の四つを頂点間の相互のコミュニケーションが必要とする四面体モデル、というのは、分かりやすいけど、実際にやるのは難しいだろうなあ。だからこそ、NPOという形の組織が必要だと考えたのだろうけれど。
 ところで、特集中に、「偏差値50からの大学選び」というコラムがあるのだが、冗談かと思ったら結構本気の内容なので、びっくり。誰が読むんだろう……。
 特集外だが、佐倉統「生命と文化のはざまで 7(最終回) 文化のグローバリズムとローカリズム、そして国立大学法人化」も大学ネタ。著者自身が総長補佐として法人化に必要な検討のために走り回っている経験の一端が書かれていて興味深い(ちなみに、前半の、文化の国際化と自立化をどのように両立するのか、という問題について実体験から語る部分も面白い)。そうか、独立行政法人じゃなくて、国立大学法人という別の名称(中身はやはりよくわらかんが)の法人なのか。全然わかってなかった。
 この他、書評である坪内淳「『国際関係』の荒波の中で…… 『新「帝国」アメリカを解剖する』など」がいい感じ。最近異常にはやっている「アメリカ」本に対して「いったい何の目的と存在価値があるのか」と一刀両断(ただし、佐伯啓思『新「帝国」アメリカを解剖する』については褒めてます)。とはいえ、「若い世代に構想力のある議論が見られない」「他国の大統領のアホさ加減を笑っている暇はない」といわれてしまうと、ちと、いたたまれない感じではある(こっちももう「若い世代」ではなくなってきているのだが)。
 巻末のICC Reportには、2003年10月10日〜11月24日にかけて開催された「記録と表現 アーカイヴを作る、使う」と題したワークショップ、シンポジウムについてのレポートを掲載。短いレポートだが、デジタル・アーカイブを含めた、アーカイブについて関心のある人は押さえておいてもいいかもしれない。
 それにしても、『InterCommunication』はいつからこんなに読みやすくなったのか。以前は、『現代思想』なみに読みにくかったのに。しかし、これでは、単に、ややとんがったレイアウトのちょっと左ぎみ総合誌、という位置取りになっているような気も。まあ、買っても読めないより、読みやすい方がいいか。

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コメント

「InterCommunication」は、0号(創刊準備号)が存在しているので、48号は通算で49冊目、となります。

読みやすくなったのは、編集委員から浅田彰が外れた影響が大きいのかもしれません。

 あ、なるほど、創刊準備号だったんですか。納得です。kdmytkさん、ありがとうございました。
 そういえば、浅田彰が外れた時に、何か揉めたような話を聞いたことがあるような(記憶があいまいですが)。やはり、編集方針自体が、以前とは変わっているんですね。

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