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2004/03/14

ターミノロジー学の理論と応用

 岡谷大・尾関周二『ターミノロジー学の理論と応用 情報学・工学・図書館学』(東京大学出版会, 2003)を読了……せずに、途中で挫折。こりゃ、全部頭から読もうとしたのが無謀だったかも。
 「ターミノロジー学」といっても聞きなれない人が多いと思うが(と書いている自分自身、この本の存在を知るまでは全く知らなかった)、要するに、専門用語、といった場合の「用語」を対象にする学問である。
 例えば、普通の語学研究だと日常会話や文学が主な対象になる。一方、ターミノロジー学は、技術文献や科学技術系の論文などに登場する言葉、特に「用語」と呼ばれるような言葉を対象にして、その定義付けや用語間の関係(例えば、「タイヤ」や「エンジン」とは、意味の中身は全然関係ないが、両方とも自動車の部分を構成する、という意味では関係づけられている、とか)を分析し、体系化していく学問……ということらしい。「テクスト」ではなく、「ドキュメント」を中心的な対象にしている、という感じではないかと思う。
 当然のことだが、特許や、自然科学系の論文で、専門用語の意味をみんながバラバラに使っていたのでは話にならないし、各国語の用語間の関係も整理されていないと、翻訳もままならない。ターミノロジー学は、こうした課題に立ち向かっていく学問……ということらしい。全部は読んでいないので、いま一つ自信がないなあ。
 本書は、そのターミノロジー学の理論から応用、そして、隣接諸分野との関係までを概説してしまおう、という贅沢な一冊だ。
 そんな学問、自分には関係ないわい、と思う人も多いかとは思うが、実は、「用語」の問題は、組織横断的なプロジェクトなどの場面で、日常的に発生している。同じ言葉が、部署が違うと異なる意味で使われていたり、同じ作業が違う呼び方をされていたり、ということは、多くの組織で起こっていることだろう。別々にやっていて問題がない間はそれでもいいが、共通の課題に一緒に取り組もうとすると、そもそも話がちぐはぐになって進まなくなったりする。そういう意味では、程度の違いこそあれ、「用語」というのは意外に身近な問題なのだな。
 それにしても驚くべきは、このターミノロジーの理論も方法論も、ほぼ、ヴュスターという一人の人物が基礎を築いた、ということである。おそるべし、ヴュスター。本書の第2章「ターミノロジー学の理論」は、ほぼ、このヴュスターの理論の解説だったりするので、詳細はそちらを見て欲しい。
 が、問題は、この理論の部分が一番分かりにくい、ということだ(実は、私が挫折したのはここだったりする)。むしろ、これから手に取ろう、と思う人は、第3章「ターミノロジー活動のアウトライン」、第4章「ターミノロジー学の知識への応用」あたりから入るのが正解だろう。具体的なターミノロジー学の応用について頭に入れてからでも、理論に挑むのは遅くはない。ISOなど、国際規格への応用も進んでいることなどが書かれていて、正直、驚かされる。
 もう一つ、本書の問題をあげるとすれば、本書が紙の形態で出版されたことではなかろうか。本書内部での参照や、各種関連諸機関等やその活動についての言及が多く、「ああ、ここがハイパーリンクになっていれば……」と思ったのは一度や二度ではない。各種団体へのWebサイトや、より詳細な解説、関連する論文など、様々な情報への参照がハイパーリンクの形で組み合わされていれば、ずっと理解しやすいものになったのでは。参照先を省いて、骨組みだけが提示されてしまっている感じ、といえばいいかなあ。まあ、単に、分かっている人にとっては当たり前のことが省かれてしまっている、ということなのかもしれないが……。
 というわけで、本書のハイパーテキスト版か、あるいは、「理論と応用」ならぬ「入門」が別途必要……なのは、私の読解力の低さ故、かもしれないが、もっと普及してしかるべき学問の入り口となる一冊にしては、やや敷居が高いのではなかろうか。
 それでも、機械翻訳や、シソーラス、図書分類などに関心のある向きは、目を通しておいた方がよいかもしれない。あ、ソシュール好きの人も(ヴュスターはソシュールを批判していたりするので)、見ておくと面白いのでは。
 余談だが、先日から、bk1ブリーダープログラムに参加していたりする。自分で買って自分でためるポイントばかりになりそうな気もするのだが……。

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