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2004/04/04

アインシュタイン相対性理論の誕生

 安孫子誠也『アインシュタイン相対性理論の誕生』(講談社現代新書, 2004)を読了。部屋中に積み上がるハードカバーを横目に、ついつい新書に手が伸びる今日この頃。いかん……。
 相対性理論ネタで新書といえば、同じく講談社のブルーバックスシリーズを思い出してしまうのだけれど、本書はブルーバックス系の解説本とはちょっと趣が違う。相対性理論の解説が主な目的(解説としても分かりやすい部類に入ると思うが)なのではなく、アインシュタインが相対性理論に至るまでの道筋をたどっていこう、とのが主。というわけで、普通はあんまり知られていない、特殊相対性理論以前の論文や、同時期の書簡、アインシュタイン自身による後の回想などを丁寧に読み解きながら、アインシュタインの思考がどのように展開していったのかが論じられている。
 ちなみに、特に目立って攻撃的な文体、というわけではないのだが、実は結構、論争的な議論が展開されていて、欧米の双子のパラドックスは存在しない(あるいは説明に一般相対性理論を必要としない)という論者を論破したり、物理学史の先駆者としては大御所の広重徹による相対性理論成立に関する議論を批判したりもする。とはいえ、丁寧に原資料(複数の版や言語版があればそれらを比較したり)を読み込んだ上での先行研究批判だ、ということが伝わってくるので、よくある為にする議論とは違って、嫌みな印象がないのがいいところ。
 単なる歴史叙述だけではなく、アインシュタインが相対性理論を確立した時代(20世紀初頭)に至る物理学においては、イギリスを中心とした「粒子力学的伝統」とドイツを中心とした「化学熱学的伝統」という二つの研究の潮流があり、アインシュタインは後者の「化学熱学的伝統」の影響を強く受けていた、という話が展開されていて、これが結構面白い。相対性理論を初期の段階で受容した物理学者や、アインシュタインをノーベル賞に推薦した面々も、「化学熱学的伝統」の研究者が中心だったりする、とのこと。慣れ親しんだ考え方の延長線上にあるかどうかが、新しい理論の受容にも影響を与える、ということか。
 かなり徹底的に数式を排除して、中学生レベルの数学で比喩的に説明されているので、数式嫌いの人でもかなり読みやすいはず(逆にいえば、相対性理論の数学的解説を求めてはいけない)。また、別離を迎えてしまった最初の妻との手紙が、重要な資料として使われていたり、学問的側面と人間的側面のギリギリの接点からアインシュタインの思考が浮かび上がってくる、という展開に、ちょっとぐっときてしまった。
 来年(2005年)は、(特殊)相対性理論を確立した論文の発表から100年で、しかもアインシュタイン没後50年、とのこと。来年読んでもいいかもしれないけど、とりあえず、予習にお勧め。

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コメント

初めまして。
物理学で検索したら、
私と同じ本へのコメントを書かれていることを知り
読ませていただきました。

とても、きちんと書かれていて感心しました。
ありがとうございました。

理科大好き人間さんのWeblogは、
http://manabinoasiato.cocolog-nifty.com/blog/
でしょうか。
私がはしょった、アインシュタインの自伝ノートについて、少し触れられていますね。

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