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2004/08/08

世紀の祭典 万国博覧会の美術

 東京国立博物館に、『世紀の祭典 万国博覧会の美術〜パリ・ウィーン・シカゴ万博に見る東西の名品〜』(会期:2004年7月6日〜8月29日)を見に出かけた。
 日本国として初めて正式参加した1873年のウィーン万博(ちなみに、その前の1867年に幕府・薩摩藩・佐賀藩がパリ万博に参加)から1905年のリエージュ(ベルギー)万博まで、日本が出展した工芸(美術)品を集めた第一部と、1855年から1900年までのパリ万博に出展された絵画を中心とした西洋美術の変遷をたどる第二部、という二部構成。
 はっきりいって、壮絶なのは第一部。和洋折衷バロックとでもいうか、超絶技巧と悪趣味スレスレのエキゾチズムてんこ盛り、欧米人のハート狙い撃ちの巨大工芸品が次々ならぶ前半もすごいし、西洋の美術の枠組みに自らを合わせていくことで、輸出工芸品の展示ではなく、高い文化度を象徴する美術品であることを狙った後半の展示品も当時の関係者の執念が伝わってくる。
 全体を通覧する事で、江戸の職人が消えて、西洋美術の枠組みに対応した芸術家が生まれてくる過程が浮かび上がってくる、という構成もお見事。
 現在の視点から見て、「芸術的」であるかどうか、という枠組みとは無関係に、あらゆる工芸分野における超絶的な技巧を楽しむ、というのが、一番素直な楽しみ方かもしれない。逆にいうと、「芸術」「美術」という規範が切り捨てているものは何なのか、ということも、何となく、浮かび上がってくる。
 面白い展示品はあっちこっちに散らばっていたのだけれど、個人的にはアール・ヌーボー丸出しの陶芸にびっくり。こんなのあったのか。
 あとは、「自在」と呼ばれる金工による可動置物もすごかった。超リアルに作られた鷹とか、龍とか、カマキリとか、海老が、ちゃんと各パーツが動くようにできているんである(動かした姿は写真でしか確認できないのだけれど、よく見ると関節とかが動くようにできているのがわかる)。精密フィギュアの原点を見た、という感じ。
 リエージュ万博の「百花百鳥の間」の下絵を用いた部分的な再現も壮絶。四面の壁、天井全てが鳥と花が大量に織り出された綴織で囲まれた部屋、という代物なのだが、天井に織り出された大量の鳥が全部精密に羽を広げた腹側の姿だったり、リアリズムなのか幻想的なのか、何だかもうよくわからない空間が作られていたことが、断片からですら浮かび上がってくる。
 第二部は絵画中心で個人的にはあんまりピンとこなかったが、その中では、パリ万博関連の案内用地図や全景図といった印刷物、ポスター類が面白い。同じパリ万博とはいっても、1855年の1回目から1900年の5回目まで、その度毎に全く新しく最新技術を用いた建築が作られている様子がよくわかるし、ポスターに描かれた妙な見せ物っぷりも、万博が持つお祭り的要素を伝えていて何とも怪しげ。
 ちなみに、今回、音声ガイドを使ってみたのだけれど、後半の西洋美術史本流の話になると、いきなり詳しくなるのには正直閉口。見せるべきは絵画作品そのものじゃないんじゃないのかなあ。そういう意味でも、「美術」「芸術」の抱える問題を感じさせる展示だった。
 この後、大阪市立美術館名古屋市博物館を巡回する、とのこと。「美術品」とは何なのか、考えてみたい人はぜひ。
 後、余談だけれど、東京国立博物館のWebサイトに、「今日の博物館」とか、「今日出会える名品」というコーナーができていた。要するに、その日その日の展示の全体像や常設展示の入れ替えの状況が把握できる仕組みなんだけど、いつでも自分が見たい作品が展示されているとは限らない、博物館ならではのサービスとして注目かも。

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コメント

こんばんは。
コメントありがとうございます。

それに素敵な本の紹介までしていただき
感謝感謝です。

今後とも宜しくお願い致します。

Takさん、こちらこそ、よろしくお願いします。

そうなんですよ、東博の本館は工事中なんですよね。
9月1日のリニューアルが楽しみではあるんですが、今も営業中のミュージアム・ショップはリニューアルされないのかどうかが、ちょっと気になったりします。

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