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2005/02/06

暗黒のシステムインテグレーション2

 森正久『暗黒のシステムインテグレーション2 コンピュータ文化の夜明けのために』(アイ・ディ・ジー・ジャパン, 2005)を読了。読み終わって一週間……はまだたってないかな?
 前作もこりゃえげつない、という話のオンパレードだったが、今回もまたすごい。情報システムの構築を請け負う側の一SEの視点から見た、いわゆるIT業界の実相、ということになるわけだが、コンサルの口八丁、営業と実働部隊の軋轢、法務部門と前線の乖離、思い付きが暴走する発注側企業、上層部間の取引に翻弄される現場……といった具合に、こりゃひどい、と思いつつ、いや、そういえばうちのとこでも……という事例が満載。絶望的な展開の話が多い一方で、以外に読後感が明るいのは、著者のまっとうなバランス感覚と、問題意識のおかげだろう。
 職人の伝統の復活、とか、モノづくりによる日本経済の復活、などという話を聞くが、本書を読むと、情報システムの構築や維持こそ、実は職人技の世界だということがよくわかる。よく考えてみれば当り前のことだ。仕事の段取りやサービスの仕方、コミュニケーションのあり方は、その企業や組織に固有の側面があるわけで、そういうところに密着した情報システムは、ほとんどの場合、オーダーメイドにならざるを得ない。できあいのメニューの組み合わせだけで何とかなるような世界ではないってことだ。
 そして、合理化やリストラ、コスト削減という名目によって、優れたIT職人が活躍の場を奪われていく様子が、本書では度々描かれている。もし、本気でモノ作り日本の復活を願うのであれば、「情報システム」というモノを作る職人の復活を考えるべき、などと思わず考えてしまう。いや、ほんとに。
 もう一つ、特徴をあげるとすれば、悲劇的な事態の原因の多くが、マネジメント層の判断にある、という事例がやたらと多いところか。日本経済の失速の原因は、良質なマネジメント層の育成に失敗したことにあるのではないか、と思えてしまうほど。これは、IT業界だけの問題ではないだろう。……っていうか、自分のことを棚上げしている場合じゃないか……。
 巻末には、同じ『Windows Server World』の連載で、こちらも既に単行本化されている『システム管理者の眠れない夜』の著者、柳原秀基との対談もあり。「ウィン・ウィン」の話が出たら気をつけろ、とか、短い中に、実に含蓄のある話がいろいろ。ブラックなネタ満載でありながら、単なる愚痴ではなく、問題に立ち向かっていこうと呼びかける姿勢には救われる。
 対談でもう一つ。技術を使いこなすためには中身を知る必要があるし、知るためには無駄がどうしても必要だ、という指摘と、最後の「自分で判断する力を」という言葉が重い。効率化の美名のもとに行われた切り捨てによって、失われたものの大きさを、どれだけ多くの組織トップや経済評論家が自覚しているのだろう。

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