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2005/05/15

パンツをはいたサル/パンツを脱いだサル

 栗本慎一郎の『新版 パンツをはいたサル 人間は、どういう生物か』(現代書館, 2005)と『パンツを脱いだサル ヒトは、どうして生きていくのか』(現代書館, 2005)を読了、というか、実は後者は斜め読み。いつもなら、それぞれ、bk1にリンクをはるのだけど、今回はやめておく。褒めないから。
 それなら、取り上げなければいいのだけれど、なんとなく、書かずにはいられなかったりする。
 昔話になるのだけれど、高校/大学時代の私にとって、理想とするエッセイ風文章の書き手の代表は、小田嶋隆と、栗本慎一郎だった(もちろん、そんな風に書けたことなど、一度もないけれど)。特に、栗本慎一郎は、元々理系指向の強かった私に、文系学問も面白い、ということを示してくれたという意味でも、ちょっと特別な存在だった。
 ところが、その栗本慎一郎は、大学教授を辞めて、政治家に転身したあたりから、どんどんトンデモの世界に突き進んでいってしまう。当時の日本の思想界の代表選手を切りまくった『鉄の処女 血も凍る「現代思想」の総批評』(光文社カッパ・サイエンス, 1985)や、ハンガリーのブダペストに関する歴史&紀行エッセイ『ブダペスト物語 現代思想の源流をたずねて』(晶文社, 1982)あたりは、今読み返しても結構読めるのではないかと思うのだけれど、1990年前後から後のものは、かなりつらいのではないか。
 で、その著者の出世作となったのが、『パンツをはいたサル 人間は、どういう生物か』(光文社カッパ・サイエンス, 1981)で、今回読んだのはその改訂新版。さらにその「完結編」と銘打って今回登場したのが、『パンツを脱いだサル』ということになる。
 『パンツをはいたサル』については、悪いことはいわないので、読むんだったら、光文社版を読んだ方がいい。『パンツを脱いだサル』に合わせる形で、今回加筆修正されているようで、突然、ユ○ヤ陰謀論がひょっこり顔を出したりして、びっくりする。正直、今読むと相当強引な展開の本ではあるけれど、バタイユや、マイケルとカールのポラニー兄弟、民俗学の小松和彦といった名前がひょこひょこ出てきて、現代思想への入口としては、それなりに意味があったのではないかと思う。80年代前半の栗本慎一郎はそんなに悪くない、ということが確認できて、ちょっとほっとした。
 『パンツを脱いだサル』の方は、陰謀論の本ではない、と自分で繰り返し書いてあるにも関わらず、ユ○ヤ陰謀論本以外の何者でもない。さらに前半は、自らを襲った脳梗塞に対する治療法に関する議論が展開されていたり(最近、その手の本を色々出しているみたい)、何とも曰く言い難い。「政治陰謀としてのビートルズ」という章に至っては、ビートルズ人気はユ○ヤ系財閥によるメディア操作の結果だ、という議論が延々と展開されてしまっている。痛い。せめて、嫌いなら、嫌いだ、と素直に書けばいいのに……。
 こうした(不思議な?)議論を支えているのが、マイケル・ポラニーの内知(暗黙知)という概念。著者の解釈では、大ざっぱにいうと、真実は体が予め知っている、自分の内側の声に耳を傾けよ、ということになっている。で、自分の内側の声に従った結果、陰謀論に(無自覚なのかもしれないけれど)はまりこんでいった、ということなのだろうか。うーむ。
 たしか、マイケル・ポラニーの暗黙知って、職人における師弟関係のように、言葉によらない形で技能が伝承される、その言語化されない知のあり方を指していたのでは……。自然科学においても、実はこうした言語化されない形での知の伝承が重要な役割を果たしている、というのが、マイケル・ポラニーの科学論の一つのポイントだったような気がするんだけど。まあ、随分前に読んだので、私の理解もめちゃめちゃかもしれない。少なくとも、著者の理解では、他者との対話の道が閉ざされてしまうわけで、どうもその辺が、何かがずれてしまう始まりだったのではなかろうか。
 それにしても、著者が、既存の学問の枠組みに(ある程度は)縛られる大学教授の職についたままであったとしたら、もう少し、何か違う展開になったのではないか、とも思ってしまう。今更、何をいってもしかたのないことだけれど。

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