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2005/07/24

働くということ

 ロナルド・ドーア著,石塚雅彦訳『働くということ グローバル化と労働の新しい意味』(中央公論新社中公新書, 2005)を先日読了。
 2003年にジュネーブの国際労働研究所と東京大学法学部との共催で行われた、「社会政策講演」(1969年のILO(リンク先は駐日事務所)のノーベル平和賞受賞以来、2年置きに行われている)を元に翻訳・再構成したもの、とのこと。講演が元になっているだけに、平易な言葉で、この100年ほどの労働環境大きな流れの変化を、わかりやすく語ってくれている。
 1970年代に先進国で達成された、労働者側の権利の強化や、福利厚生の充実など、様々な成果が、80年代から英米を発信源としたいわゆる「グローバル化」によって、なし崩し的に崩壊していく過程が、著者が過去、日本において行ったインタビュー調査などの思い出なども絡めつつ語られていくあたりが白眉か。確かに、70年代の日本と、今の日本は、ほとんど別世界かもしれない。
 労働者側の権利も賃金も切り下げられていく中で、経営側の賃金は凄まじい勢いで上昇し、かつ、一度経営トップに登り詰めると後はずっとその(一握りの人数で構成される)階層の中に留まっている、とか、いわゆるネオ・リベラリズム的な視点からは決して語られない論点が提示されていく。もちろん、社会全体が豊かになったことそのものによる変化もあったりするので、話は単純ではないのだけれど……。例えば、かつては労働側のリーダーは、学歴はないが知的能力の高い人物だったりしたが、今はそういう人は比較的容易に高い学歴を得て高い所得を得るようになっていってしまうとか、そういう話もあったりするらしい。
 著者は、英米型の「グローバル化」が、もう覆ることのない決定的な流れなのか、それとも、19世紀から積み上げられてきた労働者の権利の拡張という流れに対する、一時的な反動なのか、それはまだ決着がついていない、とすることで、若干の希望を残してくれている。巨視的な視点を導入することで、現在の「グローバル化」が、歴史的にはローカルな現象にすぎないという可能性を指摘してくれるのは、何ともありがたいのだが、じゃあ、希望は本当にあるのか、というとそれはよくわからなかったりするのだった。うーむ。

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