« 2008年10月 | トップページ | 2009年3月 »

2009/02/23

「ARGカフェ(03)商業利用の是非をめぐって(補足)」をめぐって

 當山日出夫さんが「ARGカフェ(03)商業利用の是非をめぐって(補足)」で書かれている、著作権保護期間を満了し、パブリックドメインとなった著作物における「所蔵者の権利」と「デジタル化した〈引用者注:機関・人の?〉権利」の問題についてちょっと感想めいたことなど。
 国の機関(直営)の場合、資料・史料は、国の財産であり、国の財産は何であれ、商用で利用する際には、何らかの対価を必要とする(国有財産の使用料が必要)という組み立てになっているのでは。公共財たる国の財産を使って、何らかの利益を得るのであれば、それに対して一定の適切な(何が適切なのかがまた難しいけれど)対価を国に対して提供することが必要、という理路だったと思う。おそらく、地方自治体で直営の機関の場合にも同様では。
 デジタルデータも、国(地方自治体)の財産であり、一時期、国のデータベースの無料公開が遅々として進まなかった理由も、ここにあったように記憶している。だとすると、デジタル化を国(地方自治体)の予算で実施した場合には、同様にデジタル画像やテキストデータも国(地方自治体)の財産として扱われ、その商用利用には対価が必要ということになるのではなかろうか。
 逆にいえば、著作権保護機関を満了した資料について、復刻を拒絶する根拠は(適切な対価が支払われる限りにおいて)法的にはないのではなかろうか。少なくとも、自分のところでは、実務的にはそうなっている。
 ただ、著しく公共性を欠く(例えば悪質な複製を作って、不当に高額で売りまくる、とか)場合には、所蔵者として、復刻自体を拒否することも可能な気もする。
 このあたり、本当は会計法とかの知識が必要なのだと思うのだけれど、法律ネタは自分の最も苦手とするところなので、これ以上はちょっとよくわからない。いかん。
 おそらくは、独立行政法人や、国立大学法人などの場合はまた話が違うのだろう。ん? そういえば、国立博物館の所蔵品は国の財産なんだろうか。その博物館を運営する法人の財産なんだろうか。我ながらこういう基本的なことを知らないなあ。
 何にしても、この問題は、所蔵しているのが誰なのか、というところから、その所蔵者の法的位置づけを明確にしていかないと、漠然と、博物館・美術館・図書館・文書館とまとめてしまうと、議論が混乱してしまうのではなかろうか。その点、ちょっと気になってしまった。

2009/02/22

第3回ARGカフェ&ARGフェスト@京都

 2009年2月21日(土)に、第3回ARGカフェ&ARGフェスト@京都に参加。
 ずっとブログの更新をさぼって来たのだけれど(ここのところ、仕事以外に文章を書く気力が出てこなくて)、岡本さん@ARGが、ブログに書け、と呼びかけていたので、ちょっと乗っかってみる。
 プログラムについては、ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版2009-01-18(Sun): 第3回ARGカフェ&ARGフェスト@京都への招待(2/21(土)開催)を参照のこと。
(2/23追記)2009-02-21(Sat): 第3回ARGカフェ&ARGフェスト@京都を開催も参照のこと。特に関連リンクはこっちの方が充実。

 まずは第1部について。それぞれ持ち時間5分でのライトニングトーク。
 冒頭、岡本さんから京都の飲み屋の紹介文化(どこの飲み屋でも、「○○を飲めるいい店はないか」と聞くと教えてくれる)を題材に、ARGカフェ&ARGフェストも、人脈を独占する場ではなく、互いに広げ合って行く場であってほしい、といった感じ(ちょっと違うか?)の趣旨説明があり。
 トップバッター當山日出夫さん「学生にWikipediaを教える−知の流動性と安定性」は、Wikipediaの陵墓(天皇陵)の履歴などを参照させつつ学生に課した課題を題材に、Wikipedia等のインターネット情報について、完全性・安定性と流動性の観点と、信頼性の観点がどう関係するのか、ということを問いかける内容。
 続く小橋昭彦さん「情報社会の“知恵”について」は、メールマガジン「今日の雑学」シリーズの経験を通じて、情報でも、知識でもない、「知恵」というある種の善悪判断を含んだものをどう伝えて行くのか、ということを問いかけ。あと、「今日の雑学」への参加も呼びかけ。
 小篠景子さん「「中の人」の語るレファレンス協同データベース」は、国立国会図書館のレファレンス協同データベース事業の理念と課題を分かりやすく説明しつつ、事例提供館の偏りという課題にどう取り組むべきかを問いかける、というもの。手書きのスケッチブックによるプレゼンという技が光った。
 三浦麻子さん「社会心理学者として、ブロガーとして」は、ブログでは議論はしない(それはアカデミックな場でするもの)という姿勢の話が印象的。あと、心理学系の学会誌のネット公開が全体として遅れている状況なども。出たばかりの著書(共著)『インターネット心理学のフロンティア』(誠信書房, 2009)についても紹介あり。
 谷合佳代子さん「エル・ライブラリー開館4ヶ月−新しい図書管理システムとブログによる資料紹介」では、大阪府からの補助金の全額廃止という逆境の中にあって、図書管理システムの更新や、ブログを活用した資料紹介などの取り組みを紹介。あと、サポート会員募集中とのこと。
 村上浩介さん「テレビからネットへ」では、とあるテレビ番組をきっかけとしたカレントアウェアネス・ポータルへのアクセス集中と、その際のアクセスの傾向(検索エンジン経由のアクセスが多い、とか、ケータイを使ったアクセスが結構多い、とか)について紹介。ちなみにアクセスが集中した記事は図書館猫デューイの記事とのこと。
 後藤真さん「人文「知」の蓄積と共有−歴史学・史料学の場合」では、人文科学とコンピュータ研究会の紹介や、情報歴史学という自らの専門分野を通じた、歴史資料の共有と、単なるデジタル化だけではなく解釈や構造までデータ化することが重要との問題提起も。上田貞治郎写真史料アーカイブのためのシステムを開発中との話あり。
 福島幸宏さん「ある公文書館職員の憂鬱」は、館数の少なさなどからくる情報の少なさや、情報技術に関する関心の低さなど、文書館/公文書館界の問題点を指摘しつつ、世代交代を危機であると同時に機会としても捉える視点を提示。
 中村聡史さん「検索ランキングをユーザの手に取り戻す」では、ヒューマン・コンピュータインタラクションにおける研究成果でもあるRerank.jpを紹介しつつ、人によるインタラクションの重要性について指摘。
 岡島昭浩さん「うわづら文庫がめざすもの−資料の顕在化と連関」は、青空文庫ならぬうわづら文庫における、画像によるデジタル化(テキストでなく)を個人で行う活動を紹介。文学史上の重要文献が以外に入手困難なままに置かれていることや、校訂者の権利の問題などについても。
 嵯峨園子さん「ライブラリアンの応用力!」は、企業ライブラリアンからの転職の経験を踏まえて、ライブラリアンとしての基本的な姿勢や技術が、実は様々な場面で応用可能であり、非常に優れたものである、ということを紹介。ちなみに、現在はヒューマン・コンピュータ・インタラクション分野で活躍中とのこと。
 最後の東島仁さん「ウェブを介した研究者自身の情報発信に対する−「社会的な」しかし「明確でない」要請?」は、ネット上の眉唾もの情報に対する、研究者に求められる対応についての問題提起。同時に、研究者から見た「分かりやすさ」と一般の人から見た「分かりやすさ」の差(例えば、専門用語に対する意識とか)が大きい、といった話も。

 質疑では、一番乗りで人文系の学会誌のデジタル化が進まない理由を質問してみたり。その他、(古)写真のデジタル化の課題や、今後の文書館/公文書館に必要な人材像、JCDL (Joint Conference on Digital Libraries)、ECDL (European Conference on Digital Libraries)、ICADL (International Conference on Asian Digital Libraries)などに(あるいは、せめて日本の情報系の学会に)日本の図書館員も参加すべしといった意見、人文学の危機に対して国としてどう取り組むべきかといった問題提起など、さまざまな話が展開して、短い時間ながら何と言う情報量。おそるべし。
 第1部全体としては、ライトニングトークも質疑も、その場で議論が深まる、というのではないものの、様々な問題意識が次々と展開して、頭の中がシャッフルされるような感じ。こりゃ面白い&刺激的。ただ、ちょっと今回は図書館系の人が多かったかなあ。

 続いて、会場を移しての第2部ARGフェストにも参加。要は飲み会なのだけれど、とにかく色々な人とお話しするのが眼目(あんまり一人の人を独占しないように、と、岡本さんからお達しあり)。
 第1部の発表者の何人かとお話したり、図書館雑記&日記兼用の中の人や、Lifoの中の人たちとお話したり、とにかく、いろんな人と飲んだりしゃべったりした。
 特に、京都大学の松田清先生とお話をすることができたのは、洋学史を少しかじった身としては、何と言うかちょっと感激。来年、小野蘭山没後200年なので(そういやそうか)、何かできないか、とかそんな話を聞いたりも。
 ただ、Wikipediaの中の人と話しそこねてしまったのは我ながらうかつ。せっかくの機会だったのに。あと、名刺はもっと大量に持って来ておくべきでした。
 とかいう感じで、個人的には反省点はあるものの、密度が高くて楽しい会であったことは間違いなし。ぜひ、次回があればまた参加したいもの。
 後は今回お話できた方々と、今後につながる動きが何かできれば。まあそれはまたこれから考えよっと。

(2009/2/27追記)
 小野蘭山没後200年を100年と間違えていたのを修正しました(100年前じゃ江戸時代はとっくに終わってますね……)。
 松田先生、ご指摘、ありがとうございました。

« 2008年10月 | トップページ | 2009年3月 »

2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

Creative Commons License

無料ブログはココログ