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2017/05/07

静嘉堂文庫美術館「挿絵本の楽しみ〜響き合う文字と絵の世界〜」展(2017年4月15日〜5月28日)

 静嘉堂文庫美術館(http://www.seikado.or.jp/)の「挿絵本の楽しみ〜響き合う文字と絵の世界〜」展(2017年4月15日〜5月28日)の感想、というかメモ。
 挿絵という切り口と、いくつかのテーマを掛け合わせる形で、静嘉堂文庫所蔵の古典籍を紹介する、といった趣向。以下、とりあえず、若干メモを取った内容を忘れないうちに。
 「神仏をめぐる挿絵」のコーナーでは、南宋期の写本『妙法蓮華経変相図』が今回初公開。妙法蓮華経全体の絵解きが含まれている点でも珍しい模様。江戸時代後期の姫路藩家老の河合道臣(1767-1841)旧蔵。他にも、斯道文庫蔵の『仏説仁王護国般若波羅蜜経』(楊守敬、黎庶昌旧蔵)、『太乙集成』(明の宮廷で制作された彩色写本)なども。
 「辞書・参考書をめぐる挿絵」としては、南宋刊の科挙の参考書(礼記関連3点、詩経関連1点)が、いきなり並んでいて圧巻。それにしても、受験参考書における図表重視は、既に南宋期から始まっていたのか、と思うと趣深い。科挙合格者リストである『紹興十八年同年小録』(写本)には朱熹の名前が90人目として記載されている箇所が展示されていた。『永楽大典』、『欽定古今図書集成』などの定番もここ。『三才図会』の影響を受けた日本での刊行物として、『訓蒙図彙』2種(初版と再版系統。1丁当りの図版数が違う。)、『和漢三才図会』などもあり。
 「解説する挿絵」では、程大約『程氏墨苑』(万暦34年(1606)刊)と、先行した弟子の方于魯『方氏墨譜』(万暦16年(1588)刊)を並べて比較する、という趣向。師匠が教養の深さを見せつける形で弟子を圧倒する、という大人げない感じが味わい深い。『芥子園画伝』『天工開物』といった漢籍の定番に加えて、和本では細川頼直『機巧図彙』、岩崎灌園『草木図譜』なども。高野長英『勧農備考二物考』、滝沢馬琴『玄同放言』は、どちらも渡辺崋山が挿絵に参加。前者の「二物」とは早熟そばと馬鈴薯とのこと。キャプションに「フランスで出された百科事典の蘭訳」を利用したと記載があったけど、ショメルのことかな? 渡辺崋山繋がりで、重要文化財、崋山の『芸妓図』もここに展示。
 なお、『芸妓図』等の軸ものについては、付された賛について「おしゃべり館長による戯訳」が配布されており、とっつきにくい漢文の意味を分かりやすく、親しみやすい調子で説明してくれていて、好趣向。この「戯訳」を集めた展示会企画があったら楽しそう。
 「記録する挿絵」としては、長久保赤水(『東奥紀行』)、司馬江漢(『西遊旅譚』)、間宮林蔵(『東韃紀行』)らの旅行記や、『環海異聞』などの漂流記が並ぶ。特に『亜墨新話(初太郎漂流記)』の、メキシコの風景の彩色図による再現は、他にあまり見たことがない感じ。
 「物語る挿絵」としては、明代の絵入刊本として『琵琶記』『隋煬帝艶史』『唐書志伝通俗演義』が並び、どれも細密な挿絵が堪能できる。挿絵は見開き構成になっていたりして、後の日本への影響もちょっと気になる。和本は、伊勢物語の写本と刊本。特に承応3年(1654)刊本の方は色変わり雁皮紙を使用した小型本で、同様のものはあまり見たことない気がする。その他、奈良絵本、狂歌絵本など。ちなみに狂歌絵本『吾妻曲狂歌文庫』は、音声ガイドでも大活躍されている河野元昭館長が「僕の一点」にも選んでいるように、正に逸品。

静嘉堂文庫美術館「挿絵本の楽しみ」3 (饒舌館長)
http://jozetsukancho.blogspot.jp/2017/04/blog-post_27.html

狂歌が「物語」?という気もしたけど、作者を含めてキャラクター化しているという意味で、広く「物語」として見ることもできそうなので、これはこれで良いのではないかと。

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