「アジア」はどう語られてきたか
子安宣邦『「アジア」はどう語られてきたか 近代日本のオリエンタリズム』(藤原書店, 2003)を読了。
藤原書店が出している雑誌、『環』の連載をまとめたものだけに、時事ネタへの言及も多い。その割に、時間が経ってからこの本を読む人に対する配慮が少々足りないような……。編集サイドで、注記や補記を補うような配慮をしてもよかったのでは。
という減点ポイントはあるものの、福沢諭吉、内藤湖南といった、近年(福沢諭吉は別に近年でもないか)の再評価に対して、特に中国への視線、というポイントから、徹底した批判を繰り広げていく議論はかなり爽快。(大日本)「帝国」の論理に対する厳しい姿勢はこれまでと変わらず、一貫している。
おそらく、最も話題になりそうなのは、発表順を崩して巻末に置かれた『国民の歴史』批判なのかもしれないけれど、むしろ、戦前の日本の東洋学者を巡る議論の方が、私には刺激的だった。江戸ネタもいいけど、もっと近代ネタをやってほしいなあ。
こっちが慣れてきたせいもあるかもしれないが、なんとなく、著者の他の本よりも読みやすいような気も。講演原稿を元にしたものが多いからかな? そういう意味では、子安宣邦入門編としてもお勧めしやすい一冊かも。
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