図書館の学校 2004年2月号
『図書館の学校』2004年2月号(no. 50)をぱらぱらと見る。
南学「図書館のABC分析」がなかなか興味深い。ABCというのは、Activity-Based Costing(活動基準原価計算)のことだそうで、要するに、例えば、本を貸し出す、という業務を一回行うとどのくらいのコスト(人件費や使用する機器に関する経費とか)がかかるのかを、算出しよう、という話。当たり前といえば当たり前の、公共サービスは無料で行われているが、コストがタダなわけではない、という事実を、具体的な金額が見えるようにすることで明確に示そう、という意図が込められている。
さらに、コスト構造を数字で見えるようにすることによって、常勤の職員が行うべき業務と、非常勤や嘱託職員に移行できる業務を切り分けることも可能になる、というのが、この短文の趣旨だったりするし、さらに、ベストセラーを貸す(借りる)ということにかかるコストを概算してみることで、実は一人ひとりが買うより高くついているのではないか、という問題提起までしてしまったりする。
論争的といえば論争的かもしれないが、こういう視点が、図書館やその他の文化機関の経営論に欠けていることは間違いないので、そういう意味では必要な指摘なのだと思う。ただ、コストだけではなく、効果(特に、直接的ではない波及効果)の算出の試みも同時に行われないと、何に優先的にコストをかけるべきなのか、という議論はできないのではないかなあ。
他には、木野修造「図書館のユニバーサル・デザイン 第11回 カウンター」が面白かった。なるほど、よくある横長のカウンターに複数人が座る、という形ではなくて、一人用のカウンターなら、そこに職員がいれば人は集まってくるし、いなければ人は来ない、そして、集まる時には自然に列もできるわけか……。空港のチェックイン・カウンターをヒントにしたそうだが、なるほどという感じである。
あと、事務室とカウンターと閲覧室が連続した空間になっていることによって、相互監視の空間ができあがってしまう、という問題とか、そこらの建築家では出てこない(開放的空間は、いとも簡単に相互監視の空間に変わりうることを認識している建築家がいかに少ないことか。特にガラスによる「開かれた空間」は最悪ではないかと思う)指摘がされていて、面白かった。使える公共建築を作るためのノウハウについては、まだまだ考えるべきことがたくさんあるのかも。
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