エマ ヴィクトリアンガイド
森薫・村上リコ『エマ ヴィクトリアンガイド』(エンターブレインBEAM COMICS, 2003)を二刷で買ってパラパラと読んだ。
あれ、もう出ていたんじゃ……と思った時には店頭で見かけなくなってなっていたので、増刷されてよかったよかった。
森薫による、軒並み広角レンズ風のパースの効いた構図の中に、物や人がてんこ盛りの描き下ろしイラストがやたらとあるのもすごいが、ビクトリア朝時代のイギリス(特にロンドン周辺)の生活について様々な角度から解説してみせる、ライターの村上リコという人もすごい。そうした細々とした情報と、『エマ』という作品がきちんと結びつけられて語られているところに、作品への愛を感じますな。単行本が付箋で二倍の厚さになっていた、というのも納得である。
『エマ』のポイントでもある「階級」について、どのようなスタンスで書くかが結構難しいところだったのではないかと思うのだが、軽すぎもせず重すぎもせず、上流・中流・下層、どれか一つを美化することもせず、と同時に、階級間の壁の厚さをも伝えていて、こりゃお見事。うーん、うまいなあ。
巻末に参考文献リスト(洋書も含む)がきちんと挙げられているのも良心的。出版年の記述がないのが玉に瑕だが、まあ、この手の本でここまで書いてあるだけでも、よしとすべきか。
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