本草から植物学へ
文京ふるさと歴史館の平成15年度学習企画展「本草から植物学へ 岩崎灌園から牧野富太郎まで」(会期:平成16年2月14日〜3月21日)を見に行ってきた。
正直なところをいえば、さほど期待はしていなかったのだが、予想以上の充実ぶり。入館料100円でこれは激安というべきだろう。
ただし、平賀源内展のように、レアな超一級品が並んでいるわけではない。
基本的な資料を一般的な流布本で抑えつつ、要所要所でこれは、というものを繰り出してくるところが渋い。岩崎灌園がらみでは、『本草図譜』の近代の各版を展示したり、『日本古典全集』(日本古典全集刊行会)所収の「本草通串」の附録と間違われて収録された『本草図説』(本草図譜の前身)を展示するなど、おお、そうだったのか、という発見もある。
園芸関係については園芸書だけではなく、梅屋敷、花屋敷といった江戸期の園芸テーマパークを地図や名所図会等を駆使して紹介する展示を展開。
個人蔵の馬場大助『蛮産衆英図説』や、高知県立牧野植物園蔵の関根雲停『リュウガン枝写生』など、普段はあまり見られない図も展示されているのも見逃せない。特に、『蛮産衆英図説』は新出資料だったりする。この他、江馬活堂の日記『東海紀行』(『藤渠漫筆』第九編巻三)では、馬場大助との出会いの経緯などが詳細に書き込まれていて、これまた、めちゃくちゃに面白い資料だったりする。
最後は牧野富太郎まで話をつなげていくのだが、ちょっと無理に引っ張っている感じも……。ただし、文京区に住んでいた植物学者ということで、松村任三、三好学、伊藤篤太郎を紹介しているところがまたまた渋い。
展示品のかなりの部分を提供している平野満氏と、講演が予定されている磯野直秀氏の協力も得て、本草学史研究の最新の成果が反映されている。単なる一地域館の展示と甘く見ていた私が間違っていた。本草・博物図譜ファンは必見。
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