図書館の学校 2004年3月号
『図書館の学校』2004年3月号をパラパラと見る。
木野修造「図書館のユニバーサル・デザイン」と、「リサーチ大作戦 ネットと図書館、どっちが強い?」の二つの連載が最終回。現在、1号32頁だが、これでさらに8頁減って24頁になってしまうのだろうか……。どんどん薄くなってきた『図書館の学校』だけに、冗談にならないかもしれないと、少々心配だったりする。
「図書館のユニバーサル・デザイン」では、「ユニバーサル・デザインを適用して空間の汎用性を高め、さらにその使い方を利用者に委ね、空間稼働率を向上させることはこれからの図書館の大きな課題である」という主張が最後に展開されている。「使い方を利用者に委ね」る、というのがポイントで、手取り足取りいちいち干渉されることなく、自分の責任と判断でその空間(座っている机と椅子だったり、検索ブースだったり)を利用できる条件を整えていくことで、「個」の確立を促す、という主張になっていたりする。また、いわゆる「多目的」な部屋が、実際には有効には活用されていない、という実態を指摘して、「多目的の無目的」という言葉の意味を理解すべきだ、というあたりは、箱物全てに当てはまることだろう。
「リサーチ大作戦」は、同じ質問(今回は、「蛍の光」の封印された三番・四番の歌詞、というお題)を、図書館担当の人は図書館だけを使って、ネット担当の人は、Webだけを使って解決して、お互いにその回答を採点しあう、という連載企画。調べる人は、特に司書でもサーチャーでもなく、フリーライターだったりするので、徹底的に対決、というわけでもないのだが、それぞれの特徴はなんとなくわかるし、なんともとぼけた文体がなかなかいい感じ……だったんだけど、連載終了とは。
といいつつ、一番びっくりしたのは、松本功「21世紀パブリックライブラリー」(ちなみに、以前の連載は、『税金を使う図書館から税金を作る図書館へ』(ひつじ書房, 2002)にまとめられている)で紹介されていた、人文書の売り上げが前年比20%減(大学生協東京事業連合調べ)、という話。大学生協だけの数字で全てを代表させるのは無理があるかもしれないけれど、年に市場が5分の1ずつ縮小している業界で踏ん張り続ける、というのは、ちょっと想像するだけでくらくらしてくる。
本来は、大学図書館を中心に、図書館が買い支えるというのが理想なのだろうけれど、大学一般に人文系への風当たりは強いし、国立大学なんて独立行政法人化でどこも目の色が変わっているし……。多くの人文系の研究が、書籍の形では出版されないままに終っていくのが当たり前の世の中になるのかも。何というか、ふるいにかけるための枠組みが、個人消費者+市場の組み合わせによる選別「だけ」しかない、というのが、本当にいいことなんだろうか。松本功が問おうとしているのも、ある意味でそういうことなのかもしれない(けど、ちょっと曲解かもしれない)。
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