漢籍事始
大倉集古館の展示会、「漢籍事始 宮廷を楽しむ『国宝 随身庭騎絵巻』特別展示」(会期:2004年2月17日〜3月28日)を終了間際に見に行ってきた。アメリカ大使館が近いせいか、やたらと警官の姿が目に付く。
大倉集古館の漢籍コレクションは約1千部、3万5千冊に達するというが、絵画や工芸品に比べると展示される機会は非常に少ない。前回やったのはいつだったか、確かまだ改装工事前で、空調設備もなかったような気がする。
今回は、漢籍のみではなく、国宝『随身庭騎絵巻』などの和本も展示。漢籍だけでは客は呼べない、という判断だろうか。確かに、漢籍ファンが世の中にそれほど多くいるとは思えないが……。漢籍についての基礎知識の解説パネルなどもあり、何とか、取っつきにくい漢籍に関心を持ってもらうおう、という意識は強く現れてはいたような気がするのだが、いかんせん、展示点数が物足りない。宋版・元版だけでも相当数所蔵しているのに、もったいないという感じ。和漢を取り混ぜるなら、漢籍と日本の知識人層との関わりをもう少し紹介するという手もあったような気もする。
とはいえ、こういう機会がないよりはあったほうが圧倒的によい。ぜひ続編を期待したい。折角のコレクションを生かしてほしい、と切実に思う。
また、大倉集古館のコレクションの基礎を築いた大倉喜八郎(1837-1928)についての紹介にもスペースが割かれていたのだが、そのアジア主義者的側面(だからこそ、漢籍も収集の対象となったのではないか)は曖昧にされていた。まあ、しかたのないところか。
ちなみに、展示に関しては、慶應義塾大学附属研究所斯道文庫の指導を仰いだとのこと。折角だから、解説目録も作って欲しかったなあ。
それと、財団(大倉集古館を運営するのは、財団法人・大倉文化財団)の運営が苦しいのはわかるが、次回はぜひ、解説パネルの製作経費の増額を。スタッフの苦労が偲ばれてしまった。
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