季刊・本とコンピュータ 2004年春号
『季刊・本とコンピュータ』2004年春号(発行:大日本印刷 発売:トランスアート, 2004)を読了……したのは、結構前のことだったような。忘れきってしまう前に、面白かった記事について覚書。
仲俣暁生「共有地の開拓者たち 第三回 水越伸さん」は、現在の「ソシオ・メディア論の水越伸」が、どのような経緯を経て形成されてきたのかを、インタビューを元に再構成。実は最初は文化人類学がやりたかった、といった話もあって、「へ〜」度も高かったり。大上段に構えるわけでもなく、細部に捕われてしまうわけでもない、独特の視点の取り方の秘密(?)が、ちょっとだけ見えた気になる。
屋名池誠(インタビュー)「日本語は横書きに向かうか」は、『横書き登場』(岩波新書, 2003)の著者へのインタビュー(しまった、これ、買ってあるけど読んでないぞ)。消えていった様々な表記の可能性を語りつつ、現在のあり方を固定化してしまうような規格化の危険性を指摘したりと、ある時点の日本語表記を絶対的なものとして讃美するような観点とは無縁だったりするところがいい感じ。と、思ったら、『大阪女子大学蔵 蘭学英学資料選』(大阪女子大学, 2001)に関わっていたりする人なのか(いい資料集です)。横文字との出会いが日本語に与えた影響、というのが、キーワードなのかも。
あとは、山崎浩一「雑誌のカタチ エディトリアルデザインの系譜 第三回 『ぴあ』過剰な誌面がもたらしたもの」が、『ぴあ』のレイアウトデザインの確立の過程をインタビューを軸に再現。結果として、『ぴあ』成立そのものについての文章にもなっている。
というわけで、今回はインタビューネタが面白かった、という印象。
マンガがテーマの雑誌内小雑誌『MANGA HONCO』は、夏目房之介(インタビュー)「マンガを語るための地図を作ろう」がメイン。「熱くはならないけど、ただ「語れる」」という位相からしか語れないことがある、と語っていたりするのだけれど、これって要するに「研究者」の視点なのでは。それと、伊藤剛・小田切博・宮本大人の三人の論者の小論を集めた「マンガ論最新ショーケース2004 だからマンガは面白い」は、何となく物足りない感じで消化不良。それぞれ、もっと長い論考が読みたい。
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