深海蒐集人(2)
かまたきみこ『深海蒐集人(2)』(朝日ソノラマ眠れぬ夜の奇妙な話コミックス, 2004)を読了。
かつてのSF少女マンガの伝統は死んでいなかった……という感じ。「古い」と感じる人も少なくないかもしれないが、こういうマンガが今現在描かれていることに、正直いって、救われた気分だったりする。
舞台は近未来。地球温暖化によって、海中に沈んだ書籍や美術品などの文化財を引き上げる「ダイバー」(海に適応した素潜りが得意な人びと、という設定)が主人公。地上の人間模様と、海底に沈んでしまった遺物とが、微妙な関係を描きながら物語が組み立てられている。例えて言えば『SFマンガ大全集』に収録されていそうな感じ、といえばわかるだろうか……いや、かえってわかりにくいか……。
絵柄は、巻末の「THANKS FOR」に波津彬子の名前が入っていたりするので、そこから類推すればあまり間違いない……かな? 話の方は、一話完結という形式ということもあって、ストーリー&アイデア勝負、という面が結構強い。重層的な内面描写とかはあまりないものの、コマ割り自体は、24年組以降の少女マンガ的な伝統を引いていて、その手のマンガを読み慣れた目にはとても読みやすい。
もちろん、単に懐かし系、というわけではなくて、文化財というものが持つ、価値や意味、というものが、過去に持っていた価値とは別に、現在の社会の中で与えられていく、という観点と、歴史を抱え込んだモノそのものが持つ魅力やある種の神秘的な力、という視点が、絶妙のバランスで掛け合わされているところが魅力。少しコミカルで、どこまでも前向きな登場人物たちに騙されてしまいそうだが、ここまできっちり問題が描かれていれば、文化財保護について考える際のテキストとしても使えるのではなかろうか。
そういう意味では、単純に「SF少女マンガ」というだけの枠では語れないし、語る意味もあまりないのかも。
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