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2004/05/09

博物図譜展 博物の肖像画

 武蔵野市立吉祥寺美術館に「博物図譜展 博物の肖像画」(会期:2004年4月1日〜5月23日)を見に行ってきた。「美術館」とはいっても、独立した建物があるわけではなく、吉祥寺の伊勢丹新館FFビルの7階に展示スペース等を確保したもの(「シュピール通信」によると美術館建設計画の頓挫という背景があったとのこと)。というわけで、今回の展示についても、点数は50点に満たない。
 とはいえ、高知県立牧野植物園所蔵の関根雲停・服部雪斎・牧野富太郎、独立行政法人国立科学博物館所蔵の中島仰山・平木政次による自筆の博物画をじっくりと間近で見られるのはなんとも幸せ。特に中島仰山画の実物大ウミガメ(「緑亀」)三面図は圧巻。書き込みによると、小笠原から生きたまま送られてきたもので、25日間生存していたらしい。明治初期に小笠原諸島に関する博物学的調査が行われていた、ということか。中島仰山については、高橋由一の作品との関連の有無が問題となっている「大鮭魚ノ図」(塩漬けでサハリン(だったかな? メモを取らなかったのでうろ覚え)から送られてきたもの。これも実物大)も展示。ちょっと照明が明る過ぎる気がしたのだけれど、色あせしたりしないのかな。
 玉川大学教育博物館所蔵の教育用絵図も状態はそれほどよくないものの(もともとの紙質が悪いのか?)、まさに直近から見ることができる。カエルが爬虫類だったりして、面白い。教育用絵図のいくつかは中島仰山や服部雪斎が原図を描いており、木版だけでは画家の力量は測れない、ということがよくわかる。特に掛け図になると、とたんに質が落ちるのが何ともいえない。正確さよりもまずは普及を急いだ結果だろうか。
 展示会の図録はないものの、フルカラーのリーフレットを無料で配布。これで100円とは。ちなみに、科博所蔵の博物図譜に関しては、国立科学博物館編『日本の博物図譜 十九世紀から現代まで』(東海大学出版会, 2001)があるので参考まで(会場のミュージアム・ショップでも販売)。
 入場料100円で、同時に浜口陽三記念室と萩原英雄記念室も見ることができる。浜口陽三記念室では、メゾチントの原版(素人的には、新たに刷り増しできないように意図的に傷がつけられているのが面白かった)と完成作品を同時に展示。銅版画に興味のある人にとっては勉強になるのでは。萩原英雄の方もざっと見てきたがこれで木版とはちょっとびっくり。版画の世界も奥が深い。

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コメント

こんにちは、シュピール通信のmakibeです。
TBありがとうございました。

無理やり作った美術館でなんとも頼りないですが…。同じ100円ですから、ムーバスのように利用者が増えればいいと思っています。

海亀の大きさには本当にびっくりしました。

makibeさん、こんにちは。
勝手に参照してしまった上に、コメントまでいただいてしまって、何とも恐縮です。

100円でビルの一角で、というと、なんだか安っぽいイメージで書いてしまったような気もしますが、小さいスペースながらも、内装や照明は結構ちゃんとしてますよね。

また、面白そうな企画展示があれば、見に行こうと思います。

ところで、ムーバスって何だろう、と思ったのですが、
http://www.city.musashino.tokyo.jp/section/08030koutuu/m-bus/">http://www.city.musashino.tokyo.jp/section/08030koutuu/m-bus/
のことだったんですね。

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» 写真の無い時代の博物図譜 (2004/05/22) [きままな写真雑記]
吉祥寺美術館で開催されている、"博物図譜展 -博物の肖像画-"での、写真の無い時代、あるいは写真が一般的でなかった時代に描かれた植物や動物は、精緻で美しかった。 [続きを読む]

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