反戦略的ビジネスのすすめ
ここのところ人前でしゃべる機会が続いている。その準備やら何やらで更新がなかなかできず。それにしても、金曜日のはネタの選び方を間違えたかなー。反応が今一つ。もっと精進せないかん、ということか。
で、本題の平川克美『反戦略的ビジネスのすすめ』(洋泉社, 2004)。先日、内田樹との共著『東京ファイティングキッズ』(柏書房, 2004)が出たばかりで、そっちも読み終わっているのだけれど、はっきりいって、どっちも感想を書きあぐねている。何故かというと、両者とも、要約困難だから。
もうちょっと細かくいうと、著者自らが適宜それまでの話を要約しつつ、しかも、その要約を受けながらそれをひっくり返していく、という形で、話が展開していくので、「こういう内容の本です」というのが、私ごときでは、どうにもできない。
あえていえば、『反戦略的ビジネスのすすめ』という本は、「ビジネス」というものを、勝ち負けのレベルではなくて、もう一つ上位のレイヤーから語るための提案を行った一冊、ということになるのだろうけど、それがどうした、といわれると、さて、と困ってしまう。
たぶん、煮詰まったときに、問題自体のレイヤーを移動してしまって、別の次元で考える、というその時に必要なものを、ビジネスについて、提供しよう、ということなのかなあ。
無理して中身に踏み込んでいうと、ビジネスというのは、商品(もちろん、モノ以外も含む)を経由して行う、コミュニケーションなのだ、ということが繰り返し語られている。しかもそのコミュニケーションは、直接的にメッセージをやり取りするのではなくて、商売の言葉とルールに則って行われ、それがうまくいったのかどうかは、商品が売れる、という形でしか現れてこない、という、ちょっとやっかいな、でも、実は面白い代物だったりする。
じゃあ、それがビジネスの全てで、ビジネスってのは複雑だけど楽しいコミュニケーションといってしまえばそれで終わりか、ということもちろん、そんなこともなくて、勝ち負けというのはやっばりある。あるんだけど、でも、勝ち負けのレベルでしか物事を捉えられずにいると、見失ってしまうものもたくさんあるんだ……という、そんな感じだろうか。実際にはもっと話は複雑。でも、文章としてはとても読みやすい。シンプルなようで複雑なようで、うーん、という、なんともいえない一冊だ。
著者自身がいうように、ビジネスのマニュアルとしては役に立たないかもしれないけれど、仕事をするのが楽しい、と感じる、というのはどういうことなのか、そこから自分の仕事をもう一度考え直してみようとする時には、とても役に立つ一冊のはず。公共サービスのあり方を、本書で提示されている問題意識から考えなおすのも面白そう。
という具合に、ビジネス・仕事について考える、ということを、何となく引き起こしてくれる一冊。そのことに価値を見いだせる人は、読んで損はないと思う。
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