やりなおし教養講座
まただんだん読了本が溜まってきてしまった。まずは、村上陽一郎『やりなおし教養講座』(NTT出版ライブラリーレゾナント, 2004)を。
恩師の一人の本だけに、最近はやりの教養教育論ものの一冊、といいたくはないのだけれど、一応、そういう体裁で売られている本ではある。
書き下ろしならぬ語り下ろしなので、あの口調とリズムを思い出しながら読むと、個人的には何ともいえない味わい。若干口語ならではの表現に違和感を感じなくもないけれど、全体としては読みやすい編集だと思う。
それにしても中身について感想を書くのは何とも難しい。教育に関して論じる際に難しいのは、論者がどうしても自分が受けた教育を基準にしてしまうことだ、という話(どこで読んだんだっけ……)があるが、本書も、教育論として読むと、弱点丸出しの一冊、ということになってしまう。何しろ、著者の少年時代からの知的基礎が、どのように形成されたのか、父親の世代まで遡って論じる本なのだから。これを一般的な教育のあり方を論じた本として読むと、共感する人、しない人が、真っ二つに分かれて、なんとも不毛なことになってしまうだろう。
が、著者は、どこまでも自分の体験を一般化することに対して禁欲的だ。むしろ、自分の体験を、特殊個別的なものとして限定しつつ、自分の考え方や感じ方のベースになっている知的体験がどのようなものだったのかを、次の世代に対して、伝えるために語っている、という感じ。
もちろん、バリバリと説教(?)も入っているし、「教養」に関する歴史的蘊蓄もちゃんと踏まえられてはいるので、そういう意味では教育論として読めてしまう。読めてしまうのだけど、むしろ、一人の学者が、自らの知的遍歴の若き頃を振り返った、そういう一冊として読んでほしい、と思ってしまうのは、不肖の弟子の斜め読みかなあ。
あ、ちなみに、『哲学、女、唄、そして… ファイヤアーベント自伝』みたいな、色恋話は出てこないので、期待しないように。
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