森鴎外と帝室博物館/古代エジプト3000年の世界
昨日は、古代オリエント博物館の「古代エジプト3000年の世界」(会期:2005年3月27日〜5月8日)と、東京国立博物館の「日本の博物学シリーズ 特集陳列 森鴎外と帝室博物館」(会期:2005年3月29日〜5月8日)をハシゴ。
古代オリエント博物館の方は簡単に。
とにかく国内の機関(と個人も)の所蔵品だけで、こういう展示が成立する、というのが実はすごいことなのでは。日本人は古代エジプト好き、ということなのだろうか? 最後に、現代のエジプトに関するコーナーがちょっとだけあったのは(もう一工夫ほしかった気もするけれど)、ちょっといい感じ。古代のロマン、とかなんとかだけじゃなくて、今人が住んでいるところだ、ということを意識する必要はあるよなあ。
「森鴎外と帝室博物館」は、いつの間にか始まっていた、東博の歴史検証シリーズの一環。会場は一室のみで、展示品も30点強ということで、東博の展示全体からすれば、ボリュームは小さいように見えるが、中身は充実。
知っている人は知っていることだが、森鴎外は、晩年、帝室博物館(東博の前身)総長の職にあって、蔵書の解説目録を編纂しようとして途中で亡くなってしまっている。その「博物館書目解題」(と、セットで編纂された「博物館蔵書著者略伝」)の遺された原稿は、後に『鴎外全集』(岩波書店)に「帝室博物館書目解題」と「帝室博物館蔵書人名抄」として収録されていて(1973年版では第20巻)、検索ツールがなかなか公開されない東博所蔵の古典籍資料を探す手がかりとして、活用されていた(今も?)。
で、「森鴎外と帝室博物館」では、何と、近年発見されたという(いったいいつ?)全集未収録の「博物館書目解題」「博物館蔵書著者略伝」の原稿を展示。さらに、原稿とその解説の対象となっている現物を並べて展示することで、鴎外の考証家としての姿を示す、という形になっている。もちろん、現在の研究水準からすれば、鴎外の解説は全て完璧、とはいかないだろうが、しかし、各分野の年表や蔵書印譜、人名辞典といった、基本ツールがまだまだ整備されていない状況で、これだけのことが書けた、というのは、驚きとしかいいようがない。
展示資料は江戸後期以降ものがほとんどなので、そういう意味でのレア度は低いが、先人の資料に対する深い洞察を堪能するだけでも、意味はあり。いや、勉強になりました。
ちなみに、博物図譜関連では、服部雪斎らによる『金石図集』が見事。石の表面に現れている模様を詳細に図に写し取っていて印象的だった。
ついでに、常設展示や「特集陳列 平成17年新指定国宝・重要文化財」(会期:2005年4月26日〜2005年5月8日)もふらふら。常設展示は、近代美術が良かった。でかい空間にでかい作品がある、というのは、それだけで迫力。「新指定国宝・重要文化財」では、「対馬宗家関係資料」(九州国立博物館蔵)とか「山口県行政文書」(山口県蔵)などが、一括で重文指定されていたことにびっくり。……してるということは、新聞報道とか、ろくに読んでなかった、ってことだよなあ。うーむ。その他、明治政府による初の全国文化財調査の記録等である「壬申検査関係資料」(東博蔵)も重文指定になっていたのが印象的。
あ、あと、本館の前庭に、鶴屋吉信の臨時店舗が出ていて、その場で柏餅やあんみつが食べられるようになっていたのが、なんとも良かったなあ。ゴールデン・ウィーク限定なんだろうか。
ちなみに、次の「日本の博物学シリーズ」は、「上野の山と東京国立博物館」とのこと。また見に行くか。
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コメント
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上野までいらしてたんですね。
某展覧会ご案内差し上げ損ない深く反省。
またの機会にはちゃんとお送りしますね。
いつになるやらですが。
投稿: とろ | 2005/05/09 02:10
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050503/amano.htm
ですよね。こちらこそ、立ち寄れずにすみません。
それにしても、期間が短くてちょっともったいない気も。
投稿: oba | 2005/05/09 21:32