女學生手帖
弥生美術館・内田静枝編『女学生手帖 大正・昭和 乙女らいふ』(河出書房新社らんぷの本mascot, 2005)がすばらしい。
弥生美術館は、戦前期を中心とした挿し絵画家の作品の展覧会を展開している美術館。現在は本書の刊行に合わせて(というか、本書の刊行を展覧会に合わせたのか?)「大正・昭和 女學生らいふ」展を開催中(会期:2005年4月2日〜6月26日)。いやはや、いい仕事してるなあ。
少女雑誌などの挿し絵や小説については、覆刻や画集などの形での出版がそれなりに続いているとはいえ、少女雑誌の読者であった、女学生の側に焦点を合わせたものは、これまであまりなかったのでは。結構、画期的なムックではなかろうか。
基本的には戦前期の少女雑誌の記事やグラビア、挿し絵を材料に使いつつ、当時の女学生が何に憧れ、何を楽しんでいたのかを描き出そうとする一冊となっている。もちろん、吉屋信子を代表とする少女小説(のさわり)や、中原淳一などの挿し絵画家の作品もあり。
特に、〈エス〉(Sisterの略)が一つのキーワードになっていたりして、こりゃ、マリみて読者は必携。ちなみに、〈エス〉については、嶽本野ばらの解説エッセイが掲載されているので、なんのことやら、という人はそちらを参照のこと。
期間限定の自由、しかも、金銭的にも恵まれた家庭出身者にかなり限定された自由だったからこそ、なのかもしれないけれど、女学生(本書では、高等女学校の生徒に限定したものとして使っている)の間で愛好された様々なものの豊かさには、驚くほかない。これらが、戦後、少女マンガや少女小説、ファンシーグッズなどなど、様々な形でより広範に展開していくことになるわけで、その辺りの歴史的ルーツに関心のある向きにもお勧め。
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