オンライン・コミュニティ
クリス・ウェリー,ミランダ・モウブレイ編,池田健一監訳『オンライン・コミュニティ eコマース、教育オンライン、非営利オンライン活動の最先端レポート』ピアソン・エデュケーション, 2002. なんてのを読む。「最先端レポート」とはあるものの、原著が1990年代半ばから2000年ごろまでの情況を題材にしているので、既に「最先端」とはいえないような感じに。
翻訳がこなれていないので読みにくいことこの上ないのだが、読みどころもいくらかあり。例えば、大学において、教材の電子化やその権利関係などの問題などがからんで、学術コミュニケーションの商業化が進んだことで、現在のオープン・アクセスにつながるような議論が、90年代半ばには既に行われていた、ということがわかったり。あれって、突然出てきた話じゃないんだなあ。
他にも、Richard Stallmanが「「フリー」の百科事典と学習教材」なんて章を書いていたり、Randy Connolly「理想的な技術的コミュニティの発展と持続」では、米国において、運河や鉄道や自動車、電話、ラジオといった、「新技術」が登場する度に、遠く離れた人たちを結びつける新たなコミュニティ形成の力となる、といった議論が繰り返されていた、なんて指摘があったりして、ところどころ楽しい。
これでもうちょっと翻訳がこなれていたら、人に勧めるんだけどなあ。とりあえず、ほぼ10年前、インターネットの商業化が進みつつ、同時に新たなコミュニケーションの可能性が議論されていた時代の記録として読むのもまた一興か。
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