グロテスクな教養
高田里恵子『グロテスクな教養』(筑摩書房ちくま新書, 2005)を読んだ。
うーん、なんというか、複雑な本。「教養」を重視する男性の立場取り、というのが、要するに差別化の欲望と結びついている、という話を、戦後の様々な教養に関する議論を引きながら論じていく、という一冊……なのかな。教養にグロテスクなものとそうでないものがあるわけではなくて、教養なるものは須くグロテスクなものなのだよ、という話ではあったような。
で、だから教養はいかん、というわけでもなくて、差別化のあり方としては、実は必要悪なんじゃないか、といった視点も組み込まれていたりして、なかなか微妙。
ただし、既存のいわゆる「教養論」に対してはなかなか厳しい。教養批判、というよりは、教養論批判の一冊、というべきなのかも。
80年代に学生時代を過ごした一人としては、いわゆる東大中沢事件を扱った第三章が一番ぐっときてしまったが、世代によっては、『赤頭巾ちゃん気をつけて』が中心となる第一章にぐっとくるかもしれない。
あ、あと、男の子が主役ではあるんだけど、実は影の主役は女の子、というところが、ちょいとニクい構成かと。
なんとなく、オタク論に応用できそう、という感じがしたのだけれど、更科修一郎「敵は遠くにありて想うもの 内ゲバしか知らない子供たち」『ユリイカ』37巻9号(2005年8月臨時増刊「オタク vs サブカル!」)p.167-170. がちょっとそれっぽいような。
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