人と自然:ある芸術家の理想と挑戦 フンデルトヴァッサー展
かなり長い間、更新が中断してしまった。
この間に、生活基盤が関東地方から近畿地方に移動。どたばたしているうちに、下書きで書きかけていたエントリーのその先の展開を忘れてしまったり。まあ、いいか。
さて、まだ引っ越し後の家の中が片づいていないのだけれど、折角こちらに来たのだから、というわけで、一昨日、京都に出掛けて『人と自然:ある芸術家の理想と挑戦 フンデルトヴァッサー展』(会場:京都国立近代美術館 会期:2006年4月11日〜5月21日)を見てきた。
フンデルトヴァッサー(Friedensreich Hundertwasser, 1928-2000)は、近畿圏では、大阪市環境事業局の舞洲工場(要するにゴミ焼却場)の外観デザインで悪名高いらしい。税金の無駄遣い、とかいわれているとか。
実は、私も最初は建築家だと思っていたら、大間違い……ではないにしても、むしろ平面作品(絵画・版画・タペストリー・ポスターなど)が創作活動としては主だったらしい。展示されていたのも平面作品が中心。が、ところどころに、建築模型(実現したもの、一部実現したもの、実現しなかったものがあり)が置かれていて、個人的にはやはりそれが一番面白かった。平面作品と同じようにカラフルで、ぐにゃぐにゃしているのがたまらない。
このフンデルトヴァッサーという人は、自然と人間の共生ということを生涯の(少なくとも後半生の)テーマとした人で、徹底して直線を否定し、屋根を植物に解放しようとするその建築は、思想をストレートに形にしている(らしい)。奔放に見えるその造形が、実は、その思想の論理的帰結である、というところが何ともいえず楽しいのだが、言葉として表現された思想に、作品の解釈が縛られてしまうのが嫌な人にとっては、ちょっと鼻に付くところもあったりするのかもしれない。そういう場合には、単純に、色と形を楽しめばいいような気もするけど。
平面作品では、日本の木版職人と組んだ作品も多数合って、「百水」(Hundert + Wasser)という印があっちこっちで使われていた。結構色んな印があって、全部で何種類あるやら。誰か数えた人はいないだろうか。
図録は、よくあるタイプの論文集ではなく、資料集として割り切った作りになっていて、これはこれで好感が持てる。比較的小さめで軽いし。
同時開催の「コレクション・ギャラリー」(所謂常設展のことらしい)では、「小企画 視て、考えて…、私が見つける美術の世界I」というのをやっていて、ビデオ・インスタレーション(なのか?)を上映していたのだけれど、これが傑作。火薬と化学反応使いまくりのど派手な(だけどゆっくりした)ピタゴラスイッチみたいなやつが延々と画面で展開されるという代物。タイヤが花火でグルグル転がって激突したりするんである。この作品、フィッシュリ&ヴァイス「ものの成り行き」(1986-87)という作品名と制作年以外の情報は不明。しかもそのビデオテープは個人蔵……。ほしい。DVD化されないものか。
あ、あと、美術館の中にあるカフェ(カフェ・ド・505)の湯葉のせカレーはうまかった。このカフェで、特別展に合わせて提供されるデザートもうまそうだったけれど、デザートは美術館の近くにある別の店(オ・タン・ペルデュ)で。これがもう絶品。思わず京都万歳、と心の中で唱えてしまったことは、ここだけの秘密である。
(2006.5.3記 「概観デザイン」となっていたのを「外観…」に修正。この手の誤字はこれまでもたくさんありそう……。)
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わたしはこちらで、ストックホルムの有名な図書館と墓地の建築家、アスプルンドの小さな展覧会に行きました。
京都のそのあたりも何度か行ったなあ。友人がその近くのお寺のギャラリーで個展を開いたこともありました。お寺も今はいろいろやっています。安楽寺という小さな美しいお寺、機会があればぜひ。それに、そのあたり、良さそうな小さなフレンチやイタリアンがけっこうあるのよね。
あと、古くて面白いものなら、弘法市と天神市にはせいぜい通ってみてはいかがでしょう。
投稿: や | 2006/05/03 22:05
どもども。ご挨拶もせずにこっちに来てしまってすみません。
せっかくなので、せいぜいあちこち通おうかと思ってます。といいつつ、ついつい古本市の日程をチェックしてしまっているのですが……。
投稿: oba | 2006/05/03 23:32
はじめまして。
同じように感じていらっしゃったので、思わず書き込みさせていただきました。
私もフンデルトヴァッサー展に行って、フィッシュリ&ヴァイス「ものの成り行き」のビデオを見て大興奮。
美術館で販売されていないか確かめては見たものの、販売されておらず無念…。
と思っていたら、アマゾンで輸入版DVD買えるようです。
私もすかさず、注文しました。
早く届かないかと胸躍らせて待ってます。
Peter Fischli & David Weiss「Way Things Go」
↑これで検索してみてください。
ちなみに海外のサイトで少しだけ映像が 見ることができるので、よかったらご覧になってはいかがでしょうか?
http://www.tcfilm.ch/pop_lauf1e.htm
投稿: chacky | 2006/05/08 20:33
chackyさん、情報ありがとうございます。
いやー、あれは大興奮になりますよね。
ところで、アマゾンを確認したところ、「リージョン 1 (米国、カナダ向け ※日本国内(リージョン 2)用のDVDプレーヤーでは再生できません)」と書いてあるのですが、レビューを読むとリージョン・フリーのような。
本当はどっちなのか、大変気になります。虫のいいお願いですが、もしよかったら、購入後の結果も教えてください。
投稿: oba | 2006/05/08 22:57
昨日、Amazonから「Way Things Go」届きました!
あのコメントを信じつつ、いざ再生!
ばっちり見れました。
どうやらリージョン・オールのようです。
パッケージには特にリージョンのタイプについては表示されてはいませんでしたしね。
何度見ても、見飽きません。今日もこれからまた楽しみます!
ではでは。
投稿: chacky | 2006/05/12 20:46
レポート、ありがとうございます!
私も、早速注文しました。(人身御供にしてしまってすみません)
これでいつでもあれが見られるように……。何とも幸せです。
投稿: oba | 2006/05/12 22:04