デザインという先手
川崎和男『デザインという先手 日常的なデザインガンビット』(アスキーMAC POWER BOOKS, 2006)をこれまたしばらく前に読了。
Mac Powerの連載をまとめた本としては、6冊目。連載後の動向を踏まえた若干の追記があったり、連載時とは一部異なる順で配列した部分もある。
例の札幌市立大学学長就任辞退騒動(「全国国公私立大学の事件情報」の2004年08月23日のエントリー「札幌市立大、市長が学長を切った!? 教員の人事権・選考方法で対立 トップダウン望む川崎氏VS上田札幌市長」あたりを参照のこと。)の渦中の発言の記録でもある。札幌市に対する激烈な批判ぶりは著者の真骨頂……というのはさておいても、この問題に関心のある向きは、本人の発言として読んでおくべきだろう。
これまでの5冊にもそういった面はあったけれど、今回は、友人の死、大きな手術など、著者が様々な転機に向き合った記録という側面が強い印象がある。その分、切れ味の良い文章を期待する向きには、物足りない面があるかも。
それでも、例えば、構造設計書偽造事件を巡っては、意匠設計が優先されるばかりで、構造と設備が下請け化してしまう業界構造を指摘しつつ、さらに、その問題について、有名建築家たちがまったく発言しないことについて厳しい批判を行なっていたりする。痛快。
実はMac Power誌を読まなくなって久しいのだけれど(この著者の連載以外は読むところがほとんどなくなってしまったので)、これはまだ毎月読んでいたころの連載をまとめたもの。連載自体はまだ続いていて、三年弱分が一冊、ということは、次が出るのは(順調にいけば)また3年後ということになる。連載時に読んでいない状態で読むと、どんな感じになるのか、今からちょっと楽しみ。
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