東京人 2007年12月号 特集「昭和30年代 テレビCMが見せた夢」
konoheさんが紹介(というか、執筆)されているというので、『東京人』2007年12月号(22巻14号(通巻248号))を購入、読了。
こっち(近畿地域)では手に入りにくいかな、と思いきや、なぜかTSUTAYAで売っていてちょっとびっくり。
特集は『Always 続・三丁目の夕日』公開に合わせて、「昭和30年代 テレビCMが見せた夢」。
・昭和30年代の(ということは、テレビCM草創期の)代表的、または(今から見ると)変わり種のテレビCM紹介
・当時のCMに関係するキーパーソンのインタビュー、エッセイ(柳原良平、山下鈴雄、泉大助、大橋巨泉、小林亜星)
・CMに関するエッセイ
・対談(中野翠×鹿島茂、山川浩二×天野祐吉)
といった内容。
CM史だけではなく、特に大衆音楽史に関心のある向きも、チェックしてもよい内容ではなかろうか。特に三木鶏郎とその周辺に関する記事や証言が多い印象。一方で、アニメーション史的な記述は薄いような。柳原良平が、アンクルトリスと、桃屋ののり平、シチズン坊やが同じアニメーターだったと語っているくらいか。画面写真が結構あるので、資料的には意味がありそうだけど。
必読は高野光平「黎明期CMの考古学。」(p.72-77)、山田奨治「なぜ見られない? 昔のCM。」(p.90-91)か。相変わらず、タイトルの最後に「。」が付くのが、『東京人』流。
「黎明期CMの考古学。」は、初期テレビCMが、現在のように画一化されていない、多様な形式、形態を持っていたことを実例に基づき検証。現在のCMが可能性の一つでしかったことがよく分かる。
「なぜ見られない? 昔のCM。」は、納品形態の変化に対応して、制作会社の利益確保の方法として導入された、CMの「著作権」という考え方が、今となっては再利用を阻み、また保存の道も狭めてしまっている、という現状を指摘している。
特集全体としては懐古趣味的傾向が強いものの、一方で、歴史資料/文化史資料としてのCMの意義にも目配りされてるところがありがたい。
特集以外では、与那原恵「昆虫の世界を自由に生きる、九十六歳の現役生物画家。」(p.110-117)が、『 ファーブル昆虫記の虫たち』シリーズ(ボローニャ国際絵本原画展で入選)で知られる生物画家・熊田千佳慕の生涯を紹介。クマダゴロー名義での絵本作家としての活躍も興味深いが、兄で詩人の熊田精華の友人であった、デザイナー山名文夫の紹介で、名取洋之助の主催する「日本工房」に入社、『NIPPON』のレイアウトを担当したといった話もあったりする(熊田五郎名義)。土門拳と親しくて、土門に「恋のアドバイス」をしたこともあったとか。写真史に興味のある向きは、ちょっと見ておいてよいのではなかろうか。
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