月光に書を読む
鶴ケ谷真一『月光に書を読む』(平凡社, 2008)を読んだ。『日本古書通信』読者は必読っていうか、正確に言うと、比較的読者歴の短い読者には必読かと。
様々なテーマを軸に古今東西の様々な著作をめぐるエッセイである前半「月光に書を読む」や、随筆の名手、岩本素白について語る「素白点描」も味わい深いが、何といっても、本書の後半約半分を占める「読書人柴田宵曲」が白眉。
柴田宵曲の著作は、最近、ちょこちょことその著作がちくま文庫に入ったりしていて、何となく読んでいたいたのだけれど、いったいぜんたい、何をしたどういう人だったのか、さっぱりわからないままだったのが、ようやく氷解。子規庵との関わりとか、こういうことだったのか。三田村鳶魚の著作とか、ほとんど柴田宵曲が口述筆記してまとめたものだったとか、別の人の名前で著作が刊行されても別に怒るでもなく、淡々としていたとか、そんな話がいろいろ。著作権とか、そんな話は、まったく超越したところにいた人だったんだろうなあ。
というわけで、柴田宵曲って、何となく名前を見るけど、この人は誰、と思った人は本書を読むべし。
しかし、初出が出てないけど、この本、全部書き下ろしなのかなあ。こういう本を書き下ろしで出しているとすれば、平凡社(特に担当編集者の方)偉い、と思ってしまった。
« 落ち穂拾い(映画編) | トップページ | 今によみがえる林靖一 »
ふうん、宵の曲、それも月光がらみって、セレナードとかノクターンね。
投稿: や | 2008/10/27 22:11
なるほど。
ただ、宵曲さんはどっちかっていうと、徹底して和風な印象だったりしますが。
そういえば、「宵曲」という号の由来は、本書に特に書いていなかったような気がします。
投稿: oba | 2008/10/28 23:39