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2014/02/02

幼児教育の先駆者・浮世絵研究家飯島半十郎虚心についてメモ

小林修「箱館戦争の幕臣飯島半十郎と浮世絵研究家飯島虚心 : そして『家事経済書』のこと 」『日本古書通信』79(1), 4-6, 2014-01.

を読んでいて、飯島虚心『河鍋暁斎翁伝』について、その稿本が出版されるまで、国会図書館に眠っていたという記述があったので、今はどこにあるんだろう?とちょっと疑問に思い、飯島虚心について、少しだけ調べてみた。
一応、分かったことについて、メモとして残しておく。ちなみに、書誌事項の書き方が統一されていないのは、あちこちからのコピペだからだったりする。手抜きで申し訳ない。

簡単に紹介すると、飯島半十郎・号虚心(1841-1901)は、昌平黌で学んだ旧幕臣で、幕末・維新期には、函館まで転戦。明治に入ると、文部省で教科書編纂等に従事するとともに幼児教育における先駆的業績を残すとともに、洋々社に参画して『洋々社談』の編集に活躍している。晩年は、日本美術・浮世絵史研究に没頭し、多くの著作を残すが、多くが刊行されないままとなった。
その伝記については、次の論文に詳しい。

小林恵子「飯島半十郎の生涯と思想(その一) : 『幼稚園初歩』の著者 (人でつづる保育史) 」幼児の教育 76(9), 40-45, 1977-09-01
http://teapot.lib.ocha.ac.jp/ocha/handle/10083/42315

小林恵子「飯島半十郎の生涯と思想(その二) : 『幼稚園初歩』の著者 (人でつづる保育史) 」幼児の教育 76(10), 16-22, 1977-10-01
http://teapot.lib.ocha.ac.jp/ocha/handle/10083/42331

小林恵子「飯島半十郎の生涯と思想(その三) : 『幼稚園初歩』の著者 (人でつづる保育史) 」幼児の教育 76(11), 8-14, 1977-11-01
http://teapot.lib.ocha.ac.jp/ocha/handle/10083/42351

URLは全て、お茶の水大学教育・研究成果コレクションTeaPotのもの。当然、全文が読める。機関リポジトリ万歳。

小林論文によると、交遊関係としては、昌平黌での中村敬宇、成島柳北、幕臣時代には三井物産を起こす益田孝、一橋大学の初代校長となる矢野二郎(ともにちょんまげを落として「ざんぎり頭の開山」となったとか)、文部省・洋々社人脈としては、大槻如電、大槻文彦、「古事類苑」を編纂した小中村清矩などなど。
文部省以外では、内務省山林局で、『木曽沿革史』等を作成している。小林論文では「帝室に納本」されたと紹介されており、実際、図書寮文庫所蔵資料目録・画像公開システムを検索すると、編著者飯嶋半十郎として、明治写の「木曽沿革史」が所蔵されいてることがわかる(函架番号260・73)。
http://toshoryo.kunaicho.go.jp/Kotenseki/Detail/20999

晩年の浮世絵研究については、小林論文でも引用されている、

玉林晴朗「浮世絵研究の先覚者飯嶋虚心」書物展望 昭和13年(1938)7月号

が、

斎藤昌三編『書祭』人 書物展望社, 1940

に再録されていることが分かり、それがたまたま手元にあったので(表紙が取れたり状態悪いんだけど、天地人3冊揃いがあったので買ってた)、読んでみた。

それによると、明治期に刊行された、虚心の浮世絵研究関連の著作は、次の二点。

『葛飾北斎伝』明治26年
『浮世絵師便覧』明治26年

その他、未刊の著作として、次のものが揚げられている。

『浮世絵年表』1冊
『歌川列伝』3冊
『歌川雑記』1冊
『河鍋暁斎翁伝』5冊
『日本絵類考』10册、附録2冊

未完とはいえ、写本などで研究者の間では読まれていたようで、その後の様々な研究に影響を与えていると玉林氏はその業績を高く評価している。
ちなみに、このうち『歌川列伝』は畝傍書房(1941年)・中公文庫(1993年)、『河鍋暁斎翁伝』はぺりかん社(1984年)・河鍋暁斎記念美術館(2012年)で刊行されていたりする。
玉林氏によれば、『歌川列伝』『歌川雑記』は、東京帝大図書館に原本があったようだが、関東大震災の際に焼失したとのこと。ただし、写本が伝存するとも書かれており、畝傍書房版はそれを元にしたものなのかもしれない。
驚いたのは『日本絵類考』で、これは写本が頒布されたとのこと。明治32年に写本を予約で売り出したとのことで、10部目標だったところ、5、6部しか売れなかったらしい。三村竹清もこの写本を購入しており、竹清翁によると、この写本は虚心自身が移したものと、「島田佐内その他の人」によるものがあるとのこと。帝国図書館にも一部入っていることを玉林氏は報告しており、これが、国立国会図書館デジタルコレクションで公開されているものだろう。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2605932
しかし、ここでは本体の10冊までしかデジタル化されていないようだ。OPACで検索しても記述は10冊。附録の春本目録2冊はどこにいったのだろうか…

ちなみに、飯島虚心著の写本をCinii Booksで探すと、特に蒔絵・漆器関係の著作が、京都大学文学研究科図書館に集まっていたりするようだ。京大文学研究科には『日本絵類考』もあるが、これも附録の春本目録がないように見えるのがちょっと謎。
結局、稿本問題は解決してないけど、まあ、家の中にいてわかるのはこんなものかな。
飯島虚心の著作の影響の広がり、というのは、実は、近代写本の作成と流通の問題とも関連するような気がするけど、誰か調べてくれないものか。
あと、この飯島虚心、山口昌男好み(?)の人のような気がするけど、何か書いてたりするかなあ。

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