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2017/07/01

虎屋文庫編著『和菓子を愛した人たち』

虎屋文庫 編著『和菓子を愛した人たち』山川出版社, 2017
https://www.yamakawa.co.jp/product/15104

虎屋文庫ホームページで連載されていた「歴史上の人物と和菓子」から、「百人の人物を選び、大幅に加筆修正して誕生」(p.2)したのが本書とのこと。
紫式部に始まり森茉莉まで、テーマごとに9章構成で、和菓子と様々な人物との関わりを紹介している。一人当たり、基本見開き2ページのコンパクトなスペースの中で、人物と和菓子を紹介しつつ、図版も豊富に使用。執筆・編集には相当の苦労があったのでは、と想像させられる。あくまで軽い読み物としての体裁が貫かれているが、それも深い調査と知識の裏付けがあってのものだろう。
教科書に載るレベルの著名な人物に加えて、淡島寒月『梵雲庵雑話』や、岩本素白「菓子の譜」(青空文庫版 http://www.aozora.gr.jp/cards/001534/card52198.html )、金沢藩の支藩大聖寺藩の最後の藩主前田利鬯(としか)の日記(「御帰県日記」『加賀市史料 8』加賀市立図書館, 1988所収)など、様々な文献から菓子に関する記述が集められていて、それだけでも圧巻。
既に現在は作られなくなってしまった和菓子も多く紹介されているが、文献などから再現した図版や、現存する類似の菓子を併せて紹介するなど、往年の姿を想像できるような作りになっている。
巻末には、年表、索引(菓子名と人物名)、参考文献リストあり。
注目すべきは、デジタルアーカイブの活用ぶりで、図版には国立国会図書館所蔵の古典籍があちらこちらに顔を出し、大阪府立中之島図書館の人魚洞文庫データベース https://www.library.pref.osaka.jp/site/oec/ningyodou-index.html や、中村学園大学の貝原益軒アーカイブ http://www.nakamura-u.ac.jp/library/kaibara/ 、江戸東京博物館の目食帖(収蔵品検索 http://digitalmuseum.rekibun.or.jp/edohaku/app/collection/search から)など、デジタル化とインターネット公開の成果が縦横に利用されている。本書のような出版物に利用されるようになった、ということは、裏を返せば、デジタルアーカイブを提供する各機関は、取り上げられた各資料を安定的に公開し続けることを、あらためて求められているのだとも言えるだろう。
また、「あとがき」(p.290-291)では、各地の学芸員から教えられた史料の存在やエピソードなどがあったことが紹介されている。企画展示やホームページでの連載が、各専門機関・専門家とのネットワーク形成につながり、それがまた本書のような成果につながった事例としても、興味深い。
余談だが、本書を読んだら、ついでに国立国会図書館の電子展示本の万華鏡「あれもこれも和菓子」 http://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/25/index.html もぜひ。

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