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2018/07/26

出光美術館「歌仙と古筆」、横浜開港資料館「金属活字と明治の横浜」、東京ステーションギャラリー「夢二繚乱」

少し間が空いてしまったのだけど、終了間際に駆込みで見てきた展示会3つの感想を簡単に。

出光美術館「人麿影供900年 歌仙と古筆」
2018年6月16日~7月22日
http://idemitsu-museum.or.jp/

元永元年(1118)に、藤原顕季(あきすえ)が最初の人麿影供(えいぐ)から900年となることを記念したテーマ設定。
人麿影供は、和歌の神としての柿本人麿の像を中心にした、歌会の繁栄を祈る儀式。その中核となる人麿像の典型作でもある、佐竹本三十六歌仙「柿本人麿」を軸に、中世から近世にかけての歌仙絵の様々な作品を取り上げ、また、古筆手鏡『見努世友』(みぬよのとも)を中心に、古筆切の名品も紹介。人麿像が人麿像として判別されるための要素の解説など、図像学的な解説もあって勉強になった。
メインは佐竹本だが、実は、古典から学びそれを昇華した冷泉為恭(ためちか)、人物の個性的な表現に秀でる岩佐又兵衛といった近世の画家が影の主役。ラストは、ポスターにも使われている鈴木其一によるモダンな三十六歌仙図が登場という構成もお見事。特に冷泉為恭は、古典の要素を非常に知的に再構成をしている感じがあって、単独展やっても面白いのではないか、という印象。『日本の美術』no.261で特集されているみたいなので、そのうち見てみたい。
あと、さりげなく、加賀前田家旧蔵の『中務集』平安期写本や、同じく前田家旧蔵の藤原定家筆『定頼集』なども展示されていたのは眼福だった。

横浜開港資料館「金属活字と明治の横浜 小宮山博史コレクションを中心に」
2018年4月27日~7月16日
http://www.kaikou.city.yokohama.jp/news/p150.html

自分は文字っ子とまではいえないのだが、これだけのコレクションを見られる機会はそうないだろうと、会期末に駆け込みで見てきた。
中国で先行していた漢字活字とその技術の導入や、近代日本語活字の様々な試行錯誤の過程を概観。活字を彫るとはこういうことか、という実物の迫力には圧倒された。
横浜開港資料館蔵の資料も活躍していて、ネイサン・ブラウンらによる翻訳聖書刊行を中心に使われた連綿体活字(上、途中、下の3パターンの活字を組み合わせると、筆が途切れずに続けた書いたように見える)や、欠画がある活字の事例(『和英対訳書牘類例』横浜活版社,1873)なども興味深かった。
資料集に収録されているのは、展示資料のごく一部で、それでも貴重なものではあるが、展示解説も含めて、今回の展示で一度整理された情報が再活用されることを祈りたい。

千代田区×東京ステーションギャラリー「夢二繚乱」
2018年5月19日~7月1日
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201805_yumeji.html

戦後、竹久夢二の画集や小説を出版し、夢二再評価の基礎を築いた出版社、龍星閣の収集した資料・美術品を中心にした展示会。龍星閣のコレクションは、平成27年(2015)に千代田区に寄贈されており、学生時代の肉筆の画文集『揺籃』など、今回が初お披露目となった資料も。
しかし、圧倒的なのは、出版物のコレクションで、夢二作のものはもちろん、装丁を担当したものも大量に展示。表紙画を描いたセノオ楽譜は全点を壁面展示するという圧倒的ボリュームだった。
また、風俗研究家の岩田準一(1900~1945)によって作成され夢二自身のコメントも付されたスクラップブック、港屋で販売された夢二デザインによる各種の木版による商品など、様々な資料がコレクションには含まれていて、それらが惜しげもなく展示されていた。
図録は、判型は小さめにして、厚みの物量勝負の作り。近代グラフィックデザイン史の資料としても今後参照されるものになるかもしれない。

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