五島美術館 春の優品展「和と漢へのまなざし」 2019年4月6日〜5月6日
五島美術館の「和と漢へのまなざし」展に行ってきたので、感想をメモ(Twitterでのつぶやきを再編集)。
今回は、五島美術館と大東急記念文庫の資料を中心にした展示。古典籍・古筆切がてんこ盛りで、眼福。
いつまでリンクが生きているか分からないけど、
出品目録
https://www.gotoh-museum.or.jp/exhibition/pdf/exhibition_catalog_haru2019.pdf
を見ると、どんだけ重文あるんだ、という感じ。
なお、今回、五島美術館の第2展示室は「大東急記念文庫創立70周年記念特別展示[第1部]大東急記念文庫の精華」に充てられている。「第1部」とあるように、10月にかけて4部に分けて、大東急記念文庫の特別展示が展開される。しかも後半の第3部、第4部は実質、川瀬一馬特集の模様。通うしかない。
大東急記念文庫創立70周年記念特別展示
[第1部]大東急記念文庫の精華―絵画、古写経、書物、名家の筆跡―(2019年4月6日~5月6日)
[第2部]海外との交流―無学祖元、王陽明の墨跡や高僧像―(2019年5月11日~6月16日)
[第3部]書誌学展Ⅰ 経籍訪古志の名品を中心に―国宝「史記」をはじめとする漢籍―(2019年6月22日~8月4日)
[第4部]書誌学展Ⅱ 近代そして現代へ―嵯峨本、五山版の名品と古辞書―(2019年8月31日~10月20日)
※五島美術館2019年度年間スケジュール https://www.gotoh-museum.or.jp/exhibition/schedule.html による
さらに、大東急記念文庫の特別展示は、五島美術館、神奈川県立金沢文庫、東洋文庫ミュージアム、斯道文庫、静嘉堂文庫美術館による五文庫連携展示「特殊文庫の古典籍」の一環ともなっている。
詳しくは同連携展示のチラシ画像を参照のこと。
展示期間見ると、6月とかめちゃ重なってるんだけど、スケジュールどう組めばいいんだ…
五島美術館の展示に戻ると、今回は和漢朗詠集にスポットを当てているのがポイントかと。
以下、出品目録番号と合わせて、メモの範囲で見どころを紹介。メモなので間違っていたらご容赦を。といっても、もうすぐ展示終わってしまうけど…
(2)伊予切 伝藤原行成 平安時代・11世紀
https://www.gotoh-museum.or.jp/collection/col_04/08017_001.html
和漢朗詠集写本の断簡。大正13年に分割。
(6)戊辰切 伝藤原公任筆 平安時代・12世紀
https://www.gotoh-museum.or.jp/collection/col_04/08035_001.html
和漢朗詠集写本の断簡。銘の「戊辰」は切断が行われた昭和3年(1928)のことだそう。
(9)和漢朗詠集 南北朝~室町時代・14世紀/鎌倉時代・嘉暦元年(1326)
上下巻の書写年代が異なる取合せ本だが、下巻は書写年が奥書から嘉暦元年と明確で、しかも巻末に詩の作者である著作人の一覧があり、名前にフリガナが付されていたりする。
(10)和漢朗詠集私注 室町時代・16世紀
和漢朗詠集の注釈本としては現存最古とのこと。渋江抽斎・森立之旧蔵。
(14)賦譜並文筆要決(重要文化財) 平安時代・11世紀
賦譜と文筆要決という二つの漢詩マニュアル本?漢籍の写本のようだが、どちらも本文は他に伝本なしとのこと。
(16)藍紙本万葉集切 伝藤原公任筆 平安時代・11世紀
「藍紙本」の銘は、佐々木信綱によるものだそう。
(28)松籟切 伝藤原行成筆 平安時代・12世紀
https://www.gotoh-museum.or.jp/collection/col_04/08019_001.html
昭和26年に分割されたもの。
(32)白描応現観音図 玄証本(重要文化財) 平安時代・12世紀
中国五大十国時代の呉越国王・銭弘俶開版による版画の写しとのこと。中国の印刷物の日本への伝来についての手掛かりでもあるかと。
(56)因明論疏 巻上・中(重要文化財) 平安時代・12世紀
藤原頼長による読了したとの識語あり。
(58)平家物語 延慶本(重要文化財) 室町時代・応永26・27年(1419・20)
完本最古本。
今回、五島美術館の売りの源氏物語絵巻も展示されていた(精細な描写がこれはこれですごい)のだけど、それが霞むくらいの豪華ぶり。
それにしても(2)伊予切、(6)戊辰切、(28)松籟切と、展示解説を読んでいると、近代に入ってから切断・分割された古典籍が結構あって、近代コレクターの功罪について、考え込まざるを得なかった。近代茶道との関係も気になる(掛け軸として利用?)けど、そういう論文ないかなあ。
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