吉村生・髙山英男『水路上観察入門』KADOKAWA, 2021
吉村生・髙山英男『まち歩きが楽しくなる 水路上観察入門』KADOKAWA,2021.を読了。
板橋区立高島平図書館で開催されている「高島平×水路上観察入門展」(2021/9/12(日)~10/3(日))が面白かったので購入して一気読み。暗渠化された河川の上の空間を歩き、観察する楽しみを、著者お二人の異なる視点、アプローチで紹介している。
暗渠の上がどう変貌したかを楽しむか、暗渠化されてもなお残る河川の痕跡を楽しむか、楽しみ方はそれぞれ微妙に異なるが、都市・住宅地の開発の中で隠され、忘れられ、捨てさられたものが、さまざまな形で吹き出してくる、その様相がなんとも味わい深い。
それにしても、今はウォーターフロントなどと持てはやされたりもするが、高度成長期における都市部の河川は、工場・生活排水が流れ込み、汚濁にまみれ、悪臭を吹き出す悪所であり、住人から暗渠化が望まれるものだった、ということを自分は完全に忘れ去っていた。いかに人は忘れるのか、ということを改めて突きつけられた感じもする。
まあ、そんな堅苦しいことを考えなくても、暗渠とその周辺には、それぞれの地域の普段は忘れられた歴史と、普段は意識化されない生活のありようやその変化が詰まっている。それを写真や解説を通じて、ゆるやかに楽しむ視点を提示してくれる一冊。なお、写真が大量に詰め込まれていてそれがまた楽しいのだけれど、紙では一つ一つの写真が小さいので、老眼には、拡大できる電子版の方がよいのかも。
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