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2021/10/03

伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留 編『世界哲学史4 中世Ⅱ 個人の覚醒』筑摩書房,2020.(ちくま新書)

世界哲学史4

3まで読んだところで積ん読になっていた、伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留 編『世界哲学史4 中世Ⅱ 個人の覚醒』筑摩書房,2020.(ちくま新書)を読了。 ちなみに、本のリンク先は版元ドットコムにしてみた。書影もopenBDで使えるということでやってみた。どうやら、次の形で書影を呼び出せる様子。

https://cover.openbd.jp/9784480072948.jpg (数字はISBN)

なお、openBDからの書影呼び出しについては、次のブログの記述に助けられました。ありがとうございました。

「openBD をつかって書影画像を表示させてみる」(mersy note)

さて、本題に。

4巻目は、13世紀を中心にその前後も扱う、という感じで、内容的にはヨーロッパ、キリスト教が中心。というわけで、トマス・アクィナス無双、という感じ。結果的にアリストテレス(と、アリストテレスが提唱した概念)についての記述も多い印象。短いコラムだが、佐々木亘「トマス・アクィナスの正義論」(コラム2)など、現代的な意義に踏み込んだ話もあり。

第7章の辻内宣博「西洋中世哲学の総括としての唯名論」は、普遍論争の解説にもなっていて、ウィリアム・オッカム(「オッカムの剃刀」の人)の位置づけも含めて、分かりやすい見取り図を示してくれていて、ありがたかった(ちゃんと自分が分かったかどうかはまた別の話だけど)。

その分、第9章の蓑輪顕量「鎌倉時代の仏教」は、鎌倉時代の仏教の多様な展開をそれまでの時代の仏教の状況も踏まえつつ超圧縮して記載するという超絶技巧を繰り広げていて、これはさすがに1章に詰め込むのは無理があったのでは。第8章の垣内景子「朱子学」が思い切って割り切って細部を切り落とした記述だった分(詳しくは自分の著書、『朱子学入門』(ミネルヴァ書房, 2015)を見よ、とのこと)差異が際立った面もあるかもだけど。

その第8章は、断定文体でぶった切っていく分かりやすさが、本当にそこまで言い切っちゃっていいの、と読んでいて若干不安になるくらいの明快さで、かつ、仏教との対決を通じて確立された朱子学の特徴が分かりやすく論じられていて面白かった。『朱子学入門』も読んでみなくては。なお、もともと朱子学用語である「窮理」を論じた上で発せられた、「朱子学用語による翻訳のせいで、我々は西洋由来の諸科学を十分に受容できなかったということはないのだろうか」という問いは、漢学の素養を西洋の学問の移入においてプラスに評価することの多かった洋学史的に重要ではないだろうか。

このシリーズは、一冊読むとなかなか頭が疲れるので、すぐに次の巻に進む気にはなれないけど、またしばらくしたら、次も読もうかと思う。

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