『学士会会報』no.951[2021-VI]
『学士会会報』no.951[2021-VI]で気になった記事のメモ。
- 樺山紘一「渋沢栄一について語ろう」p.4-14
現在、渋沢栄一記念財団理事長を勤める樺山紘一氏の講演録。関東大震災後の学士会館再建を支援した話など、その業績についての話が主だが、没後の竜門社による関連資料の収集・整理や、渋沢敬三による民俗学・実業史資料の収集にも言及。1922年のアルメニア難民救済に尽力した話など、社会貢献的な側面の話も興味深い。
- 平田オリザ「地域における芸術文化活動と大学の役割」p.15-26
こちらも講演録。大学における学生選抜のあり方が、グループワークにおける役割分担や多様性の確保にシフトしていく、という話から、身体的文化資本の差を広げてしまう地域間・家庭間の文化格差を公的支援により緩和すべきという議論など。地域を発展させるための人材をどのように育てるのか、という話でもあり。
(これだけ読むと、若者以外には可能性が開かれていないように見えてしまうのだけど、それは大丈夫なのだろうか…。)
- 藤原辰史「「捨てられたもの」目線の人文学」p.56-60
『分解の哲学 腐敗と発酵をめぐる思考』青土社,2019の背景を語るエッセイ。小学校のころのゴミ拾いの体験を題材に、拾い集めることの楽しさを語るくだりが印象的。
- 川口順子「随想 アフガニスタンの忘れ得ぬ人々」p.61-64
2002年のカブール訪問時の回想。最後に「私たちはどうすればよかったのだろうか。」と問いかけつつ、「アフガニスタン国民を見捨ててはいけない。」と呼びかける。
- 原山浩介「遺跡を尋ねて 第V期第5回 〈長崎〉原爆遺跡をたどる」p.86-92
「戦後の生活や産業活動などの日常的な営みのなかで、可能な範囲で残された(残った)」長崎の被爆遺構の特徴を語りつつ、それがまた「結果として」生活の中に埋め込まれた遺構となり、被爆体験の継承を支えてきたことを論じる。戦争の記憶の継承と、文化遺産との関係についての論考としても読むことができるかと。お勧め。
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