『東京人』2021年12月号[no.447]特集「商店街に新風」
新型コロナのせいで、なかなか近隣にも出かける機会がなくなっていたこともあって、『東京人』2021年12月号[no.447]特集「商店街に新風」で報告されている、様々な取り組みで活気を取り戻しつつある東京各地の商店街の様子は興味深かった。
冒頭の、北山恒「コモンズ再生の最前線。 15minutes city TOKYO」(p.12-15)で示された「商店街の道空間を商店街が自治する共通資本(コモンズ)にする」というビジョンは魅力的。また、イベントスペースとして人が行き交う、コモンズとしての寺院・神社の境内、という視点も重要かと。ちなみに、15minutes cityというのはパリで提唱されたものだそうで、それを商店街を軸に再構成した構想、という感じ。
商店街の取り組みの具体例としては、複数の商店街をとりまめつつ、学生が「書生」として空き家に住む取り組みを進めている「文京区 認定NPO法人街ing本郷」(p.16-25)、廃業してしまった歴史的建造物でもある店舗を軸に商店街を活性化を目指す「板橋区 仲宿商店街」(p.26-31)、問屋街としての機能が失われつつある中で、URと組んで異なる業態を積極的に取り込んでいく「中央区 日本橋横山町・馬喰町問屋街」(p.34-41)、東京R不動産を中心に、空き店舗の活用を地域とのマッチングを重しつつ進める「荒川区 ニューニュータウン西尾久」(p.50-57)などが目を引く。
地域で新たな取り組みを進めるためには、時間をかけて地域内外の関係者の信頼関係を構築することや、補助金頼みではなく、持続可能な形で段階的に取り組みを進めていくことが重要であることがよく分かる特集でもある。カフェや本屋が持つ、世代や分野を超えた結節点としての機能、というのも何となくうかがえるし。それぞれの地域の地力がある程度残っているタイミングであれば、シャッター店舗がある程度増えてきた状態からでも、活性化の可能性は残されている、ということでもあり。
また、印象的なのは、その地域がもともと持っている価値を生かしつつ、新しい活力を取り込む、ということを、不動産業側も考えるようになってきている、というところ。東京各地で進む大規模再開発とは異なる方法論がありうることも示されている。近隣に一定の商圏が残っている東京だからこそ、という側面もあるかもしれないが、少なくとも、一定の人口集積がまだ維持されている地方都市であれば、参考になりうるのでは。
それにしても、こういうのを読んでいると、公共図書館と商店街、というのも、割と組み合わせとしてありうる気がしてくるのだけど、どうなのだろう。空き店舗に分館+イベントスペースが入居、というのも、ありえる気はするのだけど。
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