『科学史研究』no.300(2022年1月号)、『生物学史研究』no.101(2021年12月)
このブログ、更新を再開してからは、最低でも週一回更新を目指しているのだけど、ここのところ、読書がはかどらず、まとまって書くネタがない。というわけで、最近ぱらぱらと斜め読みした学会誌について、この先ちゃんと読むとき用に、ざっくりメモしておく(と、言いつつ大抵積ん読になるのだけど…)。
まずは、『科学史研究』no.300(2022年1月号)。
巻頭の論文、山中千尋「第3回汎太平洋学術会議序説:櫻井錠二の関与にみる開催経緯と特質」p.299-316.が面白そう。1926年に東京で開催された、第3回汎太平洋学術会議(Pan-Pacific Science Congress)の開催に至る経緯を、中心となった櫻井錠二関連資料を中心に論じている様子。1920年に設置された、学術研究会議の役割や、日本の自然科学研究の国際化の進展、関東大震災の影響も絡んだ話になっている。
小特集「仮説実験授業はどのようにつくられたか」p.329-370は、2021年5月23日に日本科学史学会第68回年会において開催されたシンポジウムを元にしたもの。板倉聖宣を中心にした、仮説実験授業成立について論じられている。理科教育に関心のある方には、興味深い内容が含まれているのでは。
綾屋沙月・平井正人・鶴田想人「シンポジウム 当事者研究と科学史の対話―—インクルーシブなアカデミアに向けて」p.371-384.も同じく、2021年5月23日に日本科学史学会第68回年会で行われたシンポジウムが元になっている。障害当事者がその障害に関する研究を行なう「当事者研究」が「障害学」と比較・対比されつつ言及されたり、当事者であることだけでは他の研究分野の研究者と対等にはなれず、一方で当事者であることに過度に期待されたりする状況が語られている様子。
斎藤憲・橋本毅彦・杉本舞「『科学史事典』編集と刊行記念シンポジウムの記録」p.385-388.は、『科学史事典』(丸善,2021)の企画・編集の経緯と、2021年5月22日に日本科学史学会第68回年会の前夜祭企画として開催されたシンポジウムの概要をまとめたもの。編集や執筆の苦心や、亡くなられた伊藤和行氏の貢献についても語られている。
続いて『生物学史研究』no.101(2021年12月)
特集は「シンポジウム:COVID-19と生物学史」p.1-40.。個人的に気になったのは、19世紀末の日本の海港検疫法制の変遷を、内務省中央衛生会における議論をたどりつつ論じる、野坂しおり「19世紀末日本の海港検疫体制における中央衛生会の役割」p.9-14.と、日本における新型インフルエンザ対策に関する体制整備の経緯を論じた、横田陽子「日本のパンデミック対策成立経緯――新型コロナを迎えるまで」p.15-21.が、どちらも公衆衛生・防疫に関する制度が、国際動向を含めて、様々な要因が絡み合いながら確立されていく過程を明らかにしている感じで、興味深い。
論文、佐藤正都「明治期における代表的な思想家たちの進化論解釈・利用と二次的な対立構造」p.41-53.は、日本における進化論の受容と進化論に関する議論を、米国における進化論に関する議論との対比も加えつつ論じている様子。日本では進化論は科学的真理として受け入れられ、それを前提にした形で議論が展開した、という結論部分だけ先に読んでしまったけど、これは面白そう。
あとは、学会誌じゃないけど、『思想』2022年2月号「[特集]ポピュリズム時代の歴史学」も面白そうと思って買ったものの、まだ読めず……
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