『日本古書通信』2022年4月号
『日本古書通信』2022年4月号(87巻4号)をぱらぱらと読んだ。どうも集中力が続かないので、簡単に。
田坂憲二「吉井勇の自筆歌集(上)吉井勇と臼井書房」(p.2-4)には驚いた。影印本ではなく、作者自選による歌集を作者の自筆で複数部作成し、頒布する、ということが昭和21年ごろに行われていた、とはまったく知らなかった。広告によれば200部刊行予定だったそうで、それを丹念に書いた吉井勇、すごい。なお、収録歌の選定過程を示す資料が、京都府立京都学・歴彩館の吉井勇資料中に残されている、というのも興味深い。
飯澤文夫「続PR誌探索(37)」(p.4-5)は三省堂の書店部門、出版部門それぞれの戦前のPR誌を紹介。戦時下の出版統制で消えた『書斎』など。
新連載、川口敦子「キリシタン資料を訪ねて(1)ポルトガル国立図書館」(p.16-17)は、形こそ新連載だが、実際には、著者の「パスポートと入館証、準備よし!」の続編かと。引き続き、各国それぞれの貴重書の扱いが分かって面白い。毎度のことながら、マイクロ資料や、昨今のデジタル化されたものを見るだけではなく、現地でカード目録を確認し、原物を請求することによる発見がある、というのが興味深いが、図書館屋的には頭が痛い。
三坂剛「福永武彦自筆識語・署名本収集について3」(p.30-31)は、紙の原物ならではのコレクションの魅力を示す切り口では。また、各版と福永武彦電子全集におけるテキストとの関係についても言及があるのがポイントかと。
森登「銅・石版画万華鏡 175 福島中佐単騎横断」(p.35)では江戸から明治の日露関係を概観しつつ、明治25年から26年にかけて、ドイツからシベリアまで、馬で横断して実地調査を行い、帰国した福島安正を描いた版画を紹介。
これも新連載の小林信行「平田禿木をめぐる人々 尾崎紅葉1」(p.38-39)は、淡々と尾崎紅葉の生い立ちから、作家に専念、活躍を広げていく過程をたどりつつ、そこに並走していく平田禿木に言及していく、というスタイルで、近代文学音痴の自分としては、ああ、そういうことだったのか、という感じの話も多くて勉強になった。こういうのを何の気なしに読んでしまって、何となく勉強になってしまうのが、雑誌の良いところでもあるが、自分の知識が貧弱なだけという話もあるか。
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