« 2024年5月 | トップページ

2024/08/24

国立西洋美術館「内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」展

国立西洋美術館「内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」

会期:2024年6月11日〜8月25日

https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2024manuscript.html

筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史氏が国立西洋美術館に寄贈した西洋中世彩飾写本の零葉コレクション(内藤コレクション)を大規模に紹介する初の展示会。小規模な展示はこれまでもあったとのことだけど、

『国立西洋美術館所蔵内藤コレクション写本カタログレゾネ』 https://www.nmwatokyo-shop.org/view/item/000000000266

刊行を期に大規模展示を展開ということの模様。同じ写本由来の他機関所蔵の零葉も同時に展示していたりと内容は充実。物量も大満足だった。ただ、一般1700円は結構強気の入場料設定のような……。また、図録はなく、ミュージアムショップでは各種グッズや過去の内藤コレクション紹介本などが販売されていた。その代わりなのか、他機関所蔵のものを除いては、個人利用に限定して撮影可となっていた。さらに、本気で詳細が知りたかったらカタログレゾネを買え、ということだろう。

展示解説はそれなりにあるのだけれど、聖書や時祷書などが多いので、キリスト教に関する基礎知識がないとなかなか楽しむのは難しい、とあらためて実感。また、一部の写本は作者(というか制作者?)が確認されていて、そうした制作過程についての知識も必要になる領域なのだな、ということもよく分かった。

年代順の展示ではないので、ちょっと分かりにくいのだけど、やはり12〜13世紀くらいの写本と、15世紀の写本では違うし、16世紀になるとぐっと近代的になる感じがちょっと面白い。これはコレクションを始めたら奥が深くて止まらなくなるのも何となく分かる。めちゃめちゃお金がかかりそうな趣味だけど……

あと、装飾写本ではなく、最後の方で紹介されていた教会法令集の写本がすごかった。法文本文の周りに注釈がレイアウトされている、というのは印刷本でも結構あるが、さらに所蔵者による書込みが加えられて、注釈の多層化が壮絶。単眼鏡で拡大してみて、やっと文字だと分かるくらいの細密さで、これまた迫力があった。

それにしても、西洋中世(ちょっと近代にかかるものもあり)写本を見に来る人がこんなにたくさんいるとは、驚愕。1枚1枚の零葉は結構小さなものが多く、同時に複数の人が見るのはなかなか厳しいので、見る人が多い特に込み合う最初の方はあんまりじっくり見られなかった。会期の頭に見に行くべきだったかも。美術館側も、この人数が来ることは想定していなかったのか、ミュージアムショップのレジの処理能力を完全に超えていたのが、どうしたものか、という感じだった。

続きを読む "国立西洋美術館「内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」展" »

2024/08/13

板橋区立教育科学館企画展「いたばしアニメ博 自由研究スペシャル」

今日は暑さに負けそうになりつつ、

板橋区立教育科学館企画展「いたばしアニメ博 自由研究スペシャル」 (会期:2024年7月20日(土)~8月30日(金) )https://www.itbs-sem.jp/exhibition/special/2024itabashi-anime/

を覗きに。

2月にも同様の展示があって、その時の感想はブログに書いたので、概略はそちらもご参照を。

板橋区立教育科学館「いたばしアニメ博」(2024/02/04)https://tsysoba.txt-nifty.com/booklog/2024/02/post-801689.html

今回はさらに、アニメ史研究や、レトロアニメ動画制作で知られる、かねひさ和哉氏とのコラボもあり。新作紙フィルムアニメと、SP用カッティングマシーンで作成された音源を組合せて、1930年代の同時再生機を使って上映するという取組みで、これは嵌まりすぎなほど。

1930年代の紙フィルム玩具映写機「カテイトーキー」でレコードトーキー映画を作ってみた(動画)https://www.youtube.com/watch?v=6hQvCF5AEZs

さらに当時(1930年代)の紙フィルムアニメのデジタル化については、米国バックネル大学が積極的にプロジェクトとして取り組んでいて、担当の研究員の方も、素材の提供などで協力されているそう。

The Japanese Paper Film Projecthttps://kamifirumu.scholar.bucknell.edu

(日本語ページ) https://kamifirumu.scholar.bucknell.edu/japanese-home/

先ほど、同プロジェクトのウェブサイトを見たら、8月6日の上映会はSOLD OUT!とあったり、米国でも関心が盛り上がっている模様。1930年代のアニメーション作品をカラーで見られる、というのは、確かにちょっと熱いかも。板橋区立教育科学館では、デジタル化された映像が一部紹介されているので、この機会にぜひ。

前回のブログで、幻灯機やゾートロープ(回転のぞき絵)と、その後のフィルムとの関係について、「解説聞きながらでないと、なかなか分からなかったかも」と書いたところ、なんと、その両者をつなぐ当時の発明品の再現に取り組んだ、というお話を研究員の方からうかがって、恐縮してしまった。日本映像学会のサイトで、その成果を発表された際の要旨が公開されているので、参考に。

メディア考古学研究会(第3回)開催のお知らせ【7月13日】https://jasias.jp/archives/29554

映像表現の歴史はまだまだ掘り尽くされていないんだなあ、ということを改めて実感させられる展示なので、絵を動かす、という技法そのものに関心がある向きはぜひ。

3月の震災の展示(企画展「震災の記憶をつなぐ」会期:2024年3月2日~3月10日)は見に行き損ねてしまったのだけど、秋にまた開催予定があるとのことで、これは今度こそ行かねば……

続きを読む "板橋区立教育科学館企画展「いたばしアニメ博 自由研究スペシャル」" »

« 2024年5月 | トップページ

2024年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

Creative Commons License

無料ブログはココログ