国立西洋美術館「内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」展
国立西洋美術館「内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」
会期:2024年6月11日〜8月25日
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2024manuscript.html
筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史氏が国立西洋美術館に寄贈した西洋中世彩飾写本の零葉コレクション(内藤コレクション)を大規模に紹介する初の展示会。小規模な展示はこれまでもあったとのことだけど、
『国立西洋美術館所蔵内藤コレクション写本カタログレゾネ』 https://www.nmwatokyo-shop.org/view/item/000000000266
刊行を期に大規模展示を展開ということの模様。同じ写本由来の他機関所蔵の零葉も同時に展示していたりと内容は充実。物量も大満足だった。ただ、一般1700円は結構強気の入場料設定のような……。また、図録はなく、ミュージアムショップでは各種グッズや過去の内藤コレクション紹介本などが販売されていた。その代わりなのか、他機関所蔵のものを除いては、個人利用に限定して撮影可となっていた。さらに、本気で詳細が知りたかったらカタログレゾネを買え、ということだろう。
展示解説はそれなりにあるのだけれど、聖書や時祷書などが多いので、キリスト教に関する基礎知識がないとなかなか楽しむのは難しい、とあらためて実感。また、一部の写本は作者(というか制作者?)が確認されていて、そうした制作過程についての知識も必要になる領域なのだな、ということもよく分かった。
年代順の展示ではないので、ちょっと分かりにくいのだけど、やはり12〜13世紀くらいの写本と、15世紀の写本では違うし、16世紀になるとぐっと近代的になる感じがちょっと面白い。これはコレクションを始めたら奥が深くて止まらなくなるのも何となく分かる。めちゃめちゃお金がかかりそうな趣味だけど……
あと、装飾写本ではなく、最後の方で紹介されていた教会法令集の写本がすごかった。法文本文の周りに注釈がレイアウトされている、というのは印刷本でも結構あるが、さらに所蔵者による書込みが加えられて、注釈の多層化が壮絶。単眼鏡で拡大してみて、やっと文字だと分かるくらいの細密さで、これまた迫力があった。
それにしても、西洋中世(ちょっと近代にかかるものもあり)写本を見に来る人がこんなにたくさんいるとは、驚愕。1枚1枚の零葉は結構小さなものが多く、同時に複数の人が見るのはなかなか厳しいので、見る人が多い特に込み合う最初の方はあんまりじっくり見られなかった。会期の頭に見に行くべきだったかも。美術館側も、この人数が来ることは想定していなかったのか、ミュージアムショップのレジの処理能力を完全に超えていたのが、どうしたものか、という感じだった。
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