2021/09/25

吉村生・髙山英男『水路上観察入門』KADOKAWA, 2021

吉村生・髙山英男『まち歩きが楽しくなる 水路上観察入門』KADOKAWA,2021.を読了。

板橋区立高島平図書館で開催されている「高島平×水路上観察入門展」(2021/9/12(日)~10/3(日))が面白かったので購入して一気読み。暗渠化された河川の上の空間を歩き、観察する楽しみを、著者お二人の異なる視点、アプローチで紹介している。

暗渠の上がどう変貌したかを楽しむか、暗渠化されてもなお残る河川の痕跡を楽しむか、楽しみ方はそれぞれ微妙に異なるが、都市・住宅地の開発の中で隠され、忘れられ、捨てさられたものが、さまざまな形で吹き出してくる、その様相がなんとも味わい深い。

それにしても、今はウォーターフロントなどと持てはやされたりもするが、高度成長期における都市部の河川は、工場・生活排水が流れ込み、汚濁にまみれ、悪臭を吹き出す悪所であり、住人から暗渠化が望まれるものだった、ということを自分は完全に忘れ去っていた。いかに人は忘れるのか、ということを改めて突きつけられた感じもする。

まあ、そんな堅苦しいことを考えなくても、暗渠とその周辺には、それぞれの地域の普段は忘れられた歴史と、普段は意識化されない生活のありようやその変化が詰まっている。それを写真や解説を通じて、ゆるやかに楽しむ視点を提示してくれる一冊。なお、写真が大量に詰め込まれていてそれがまた楽しいのだけれど、紙では一つ一つの写真が小さいので、老眼には、拡大できる電子版の方がよいのかも。

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2007/11/07

グアムと日本人 戦争を埋立てた楽園

 最近読んだ本では、山口誠『グアムと日本人 戦争を埋立てた楽園』岩波書店, 2007.(岩波新書)が印象に残っている。
 グアムといえば、比較的近くて安いリゾート天国としてしか、認識することができない。少なくとも他の姿は、メディアには登場しない。
 実は、太平洋戦争時の激戦地であったことなんて、はっきりいって、私自身もほぼ完璧に忘れていた。戦後28年間、日本兵としてジャングルをさまよったあの「横井さん」が「発見」されたのも、グアムだったというのに(実は本書を読んで、初めてそれを認識した私である)。
 しかも、グアムは一時、日本領でもあった。日米開戦直後に、日本軍は米国領であったグアムを占領し、「大宮島」としていた。植民地だったわけだ。当然ながら(あまり大きくはなかったようだが)、神社もあった。
 本書は、日米戦時のこうした記憶が、どのようにして日本人に忘却され、そして、私のように「忘れたことさえ忘れた」状態に至ったのかを、グアムの戦後史(と日本の観光史)をたどりながら論じる一冊である。
 グアムの日本人向け観光地化が、現地の意向とはほぼ無関係に推進された話や、宮崎県がメッカだった新婚旅行先が海外に広がっていった際に観光地としての地盤が築かれた、という話も興味深いが、より印象的なのが、繁栄する観光地の影で、米国の統治下で、米軍基地と観光に経済的に依存し、住民は米国の2級市民扱い(例えば、大統領選挙に参加することができない)、医療や社会インフラもぼろぼろで、米本国への人口流出と、フィリピンからの出稼ぎによる人口流入が止まらず、という、米国の植民地としての姿である。
 ということは、日本からの観光客は、米国の植民地に作られた、日本人向けの仮想リゾート地で楽しんでいることになる。沖縄が微妙に重なって見えるのは私だけか。
 もう一つ、台風で建物を失い、再建の目処が立たずにショッピングセンターの一角に間借りしているというグアム博物館の現状も強烈だ。観光地のインフラ整備が優先される結果、地元の文化機関への投資は、ひたすら先送りされているらしい。
 もちろん、著者はただ現状を嘆いているだけではない。本書は、リゾート地を越えた先にある、もう一つのグアムへの案内書でもある。巻末には、ほんの数ページだけれど、「もう一つのグアム・ガイド」が収録されている。歴史や文化への目配りを失い、買い物情報に全面的に占領されつつある(と本書で分析されている)既存の旅行ガイドブックへのささやかな、けれど、強烈な抵抗と読むこともできるだろう。
 グアムへは行ったことはないけれど、もしも行ったら、きっと(例えそれがヴァーチャルなものでしかないと知っていたとしても)リゾート気分を満喫してしまうような気がする。それでも、そんな機会があったら、必ず本書をカバンに入れていこう。そして、ビーチで朽ちかけたトーチカを眺めるのだ。

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