2021/10/16

成高雅「多紀元簡『槴中鏡』について」日本医史学雑誌67(3)[2021]

ここのところ、『日本医史学雑誌』をまともに読んでいなかったのだけど、

成高雅「多紀元簡『槴中鏡』について」日本医史学雑誌 67(3)[2021] pp.251-265

がやたらと面白い論文だったので紹介。といっても、内容を完全に理解できるほどの知識はないので、実際の論文はさらに深い、と思っていただければ。

この論文で主題となっている多紀元簡(1755-1810)は、江戸時代の漢方医。元簡の時代には、多紀家の家塾は官立の医学館となっている、というと多少はその立ち位置が伝わるだろうか。清朝考証学の影響を受けた、医学考証学派を代表する人物でもあり。その元簡の最初の著作とも言われる『槴中鏡』は、漢籍における書物収集や書誌学に関する記述を抜き書き編纂したもので、写本でのみ伝わっている。日本古典籍総合目録DBでも複数の伝本が確認できる。

これらの伝本を詳細に確認(ちなみに国立国会図書館所蔵本も当然分析の対象に)、系統関係を整理するとともに、自筆本である無窮会図書館所蔵本との比較などを詳細に行っている。(ただし、無窮会図書館は閲覧停止中のため、複製を用いたとのこと)

写本の伝播経路の分析では、大田南畝、狩谷棭斎、伊沢蘭軒、森約之、徳富蘇峰といった名前が並び、明治期に至るまで『槴中鏡』が関心を持たれていた様子がうかがえる。また、誤写等の分析から、系統関係も明らかにされており、写本の伝播の過程から見える、蔵書家たちの人的ネットワークも興味深い。自筆本である無窮会本は、流布している写本よりも大きく増補されていることも明確になっており、無窮会本の価値の高さも確認されたといえるのでは。

さらに『槴中鏡』で引用された元ネタ漢籍の分析からは、明清の考証学の影響があらためて確認されており、宋版など漢籍版本についての記載や装丁など、元簡に書誌学的な関心があったことも示されている。

というわけで、多紀元簡の学識と、漢籍を元にした書誌学に関する類書ともいえる『槴中鏡』の意義がよく分かる論文。江戸期の書誌学的関心のあり方や、人的ネットワーク、という観点から読んでみるのも面白いと思う。それにしても、こういう論文が紙でしか読めない、というのが、何とももどかしい。

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2021/10/09

慶應義塾大学図書館貴重書展示会「蒐められた古-江戸の日本学-」(2021年10月6日-10月12日)

丸善・丸の内本店4階ギャラリーで開催されている、第33回慶應義塾大学図書館貴重書展示会「蒐められた古-江戸の日本学-」(2021年10月6日-10月12日)を見てきた。展示会タイトルには「あつめられたいにしえ」と読むようフリガナがついている。

内容は、ウェブサイトで紹介されているとおり「近世期の国学者橋本経亮(つねすけ)の旧蔵資料「香果遺珍」を中心に、江戸時代の日本に華開いた好古と蒐集の文化に関する資料」を展示するもの。橋本経亮(1759-1805)は、刊行・流布した著作も少なく、国学者としてはあまり知られていないそうだが(ちなみに自分はまったく知らず)、実は結構なキーパーソンだった模様。その残したコレクション「香果遺珍」(こうかいちん)約1200点は、大島雅太郎(まさたろう・1868-1948)の寄贈により慶應義塾大学の所蔵となっている(そこに至るまでの過程もまた今回の展示の柱の一つだったり)。長らく未整理だったそうだが、今年3月に目録が刊行(一戸渉監修・執筆; 慶應義塾大学三田メディアセンター編『橋本経亮旧蔵香果遺珍目録』慶應義塾大学三田メディアセンター, 2021.)されたことを期に、今回の展示でのその一端を紹介、という趣向のようだ。

橋本経亮については、自分自身、まったく予備知識はなかったが、展示解説や図録には、藤貞幹、上田秋成、小宮山楓軒、狩谷棭斎といった人物が次々と登場し、その人的ネットワークの広がりは、自分程度の知識でも若干分かった気がした。また、経亮は、日本初の漢籍目録として知られる『日本国見在書目』の室生寺本(現在、宮内庁書陵部蔵)の最初の報告者でもあるそうで、今回、経亮の雑記である『香果抜粋』によって、その調査日が明らかにされたりしている(図録p.45-46)。

その他漢籍関係では、佚存書である『文館詞林』(唐の皇帝高宗の勅撰漢詩文集)の、経亮が蒐集した当時各所に伝存していた断片の写本が、今回の目玉の一つとして展示で大きく取り上げられていた。これまでに知られていなかった佚文を含むということで、既知の佚文との関係の考証など、若干踏み込んだ検討も解説(図録にも収録)にあったり。

経亮は、東寺や関連寺院での調査も精力的に行っていたようで、東寺百合文書と関連する(現在は百合文書中にない)文書の写本も。また、百合文書が収納されていた文書袋の模造品があって、なるほどこうやって物の形でも記録に留めたのか、というのが興味深い。同様に、『石山寺縁起』の琴柱(ことじ)を納める包みの折り方を再現したり、文字や絵だげではなく、物理で攻めているのが新鮮だった。なお、『石山寺縁起』のリンク先は展示パネルにもなっていた国立国会図書館所蔵の模本。

石山寺縁起模本(国立国会図書館蔵)(5)19コマ

画像右上に立て掛けられている楽器の琴を拡大してよく見ると、何か四角いものが絃の途中に挟まっていて、それを紙を折って再現したものが展示されていた。

石山寺縁起模本(国立国会図書館蔵)拡大画像

細部すぎる…。余談だが、画像については、国立国会図書館デジタルコレクションのIIFマニフェストを使って、人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)のIIIF Curation Viewerでリンクを作成して、サイズだけ調整した。

その他、経亮と交流のあった人物関連の、慶應義塾大学図書館や斯道文庫所蔵の資料も結構展示されていて、それも見どころだったりする。蔵書印もいろいろ堪能できるし。

とにかく、橋本経亮という人は、いろいろ調査して記録して集めて検討して考証して、資料を残してはいるのだけれど、晩年が不遇(隠居して研究に専念しようと無理やり息子に家督を譲ったら、その息子が早世したりとか)だったこともあって、その成果としてまとめるまでに至らなかったネタが大量に詰め込まれている感じ。自分でまとめる、というよりは、他の人の手伝い的な調査もあるようで、相互に情報をやりとりしていた様子も、残された断片的な記述から読み解かれ、紹介されていた。そんな感じで、当時の調査研究プロセスがそのまま残されている、という意味で貴重なのだと思うのだけれど、当人のことを思うと若干いたたまれない気持ちになってしまった。一方で、それは当時の、「好古」や復古といったものが持っていた魅力の強度を示すものなのかもしれないとも。

図録は通販でも買えるようなので(三田メディアセンターの「目録・図録など」のページに、購入申し込み方法の案内あり)、遠方の方は図録だけでもぜひ。そういえば、印譜は図録にしかないような気もするけど、見落としたかな。また、ギャラリートークの動画も後日公開予定とのこと。

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2021/09/25

吉村生・髙山英男『水路上観察入門』KADOKAWA, 2021

吉村生・髙山英男『まち歩きが楽しくなる 水路上観察入門』KADOKAWA,2021.を読了。

板橋区立高島平図書館で開催されている「高島平×水路上観察入門展」(2021/9/12(日)~10/3(日))が面白かったので購入して一気読み。暗渠化された河川の上の空間を歩き、観察する楽しみを、著者お二人の異なる視点、アプローチで紹介している。

暗渠の上がどう変貌したかを楽しむか、暗渠化されてもなお残る河川の痕跡を楽しむか、楽しみ方はそれぞれ微妙に異なるが、都市・住宅地の開発の中で隠され、忘れられ、捨てさられたものが、さまざまな形で吹き出してくる、その様相がなんとも味わい深い。

それにしても、今はウォーターフロントなどと持てはやされたりもするが、高度成長期における都市部の河川は、工場・生活排水が流れ込み、汚濁にまみれ、悪臭を吹き出す悪所であり、住人から暗渠化が望まれるものだった、ということを自分は完全に忘れ去っていた。いかに人は忘れるのか、ということを改めて突きつけられた感じもする。

まあ、そんな堅苦しいことを考えなくても、暗渠とその周辺には、それぞれの地域の普段は忘れられた歴史と、普段は意識化されない生活のありようやその変化が詰まっている。それを写真や解説を通じて、ゆるやかに楽しむ視点を提示してくれる一冊。なお、写真が大量に詰め込まれていてそれがまた楽しいのだけれど、紙では一つ一つの写真が小さいので、老眼には、拡大できる電子版の方がよいのかも。

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2021/09/21

『図書館雑誌』2021年9月号 特集「地域資料のいまとこれから」

『図書館雑誌』2021年9月号(vol.115 no.9)が届いた。特集は「地域資料のいまとこれから」。

とにかく、福島幸宏「地域資料の可能性」(p.568-571)は必見。著者のこれまでの図書館再定義論に関する文献と、関連する他の論者による主要文献に言及した、自身によるレビュー論文とでもいうべき論考で、ここを起点に、注記にある各文献にアクセスすることができる。今後、議論を深めるための起点を提供する一本。地域における社会運動や、ボーンデジタル情報への目配りも。それにしても、この論考が図書館雑誌の特集冒頭を飾る時が来た、ということ自体が事件かもしれない。

特集では、取り組み事例として、青森県立図書館デジタルアーカイブとっとりデジタルコレクションといったデジタルアーカイブや、丹波篠山市の地域資料整理サポーターの活動、埼玉県立小川高等学校を中心とした「おがわ学」における町立図書館の貢献、福岡アジア都市研究所のコレクションの紹介が、当事者である各論者により執筆されている。デジタルアーカイブ以外の事例においても、デジタル化やオンラインへの対応に関する記載がある点も注目だろう。敢えていえば、後は大学と地域との関係についての論考があれば…、というところだろうか。

特集最後の是住久美子「図書館はオープンガバメントに貢献できるか」(p.583-585)は、2018年3月に慶応義塾大学において開催された公開ワークショップ「図書館はオープンガバメントに貢献できるか?」での議論を起点に、地域資料や行政資料のオープンデータ化に図書館が果たすべき役割と、その効果について論じている。特に公共図書館に「市民の参画や行政と市民との協働」という視点を導入しようする点が重要、という気がする。

特集をざっと通読して、地域や地域資料が、なぜ重要なのか、という点についての検討が物足りない感じがして、そこが少し気になった。図書館が大手カフェチェーンと組み合わさることで、その地域とはある種独立した、都会的な空間の提供場所として評価されることが少なくない状況において、なぜ地域が重要なのか、ということについては、改めて問い直しておく必要があるような気がする。また、地域は、さまざまな社会・経済関係の基盤であると同時に、さまざまな社会的・人間関係的制約により個人を縛るものでもある。地域の公共図書館が、結果的に地域に住む人たちを地域のさまざまな制約の中に縛りつけるための仕組みとして機能する可能性について、もう少し敏感になった方がよいのかもしれない。先に触れた是住氏の論考では、地域を開いていくための地域資料の可能性も論じられているのだけれど、それに加えて、地域を変えていくための地域資料の可能性も、考えていく必要があるのかも。難しいとも思いつつ。

何にしても、福島氏の論考によると、蛭田廣一『地域資料サービスの実践』日本図書館協会, 2019.(JLA図書館実践シリーズ41)が出発点になるので読んどけ、ということのようなので、読まねば。

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2021/09/20

ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)36号(2021年夏号)特集 戦争の記憶と記録

ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)の36号を、電子版で一通り読了したので感想をメモ。

特集「戦争の記憶と記録」については、「大事なことはわかりやすい節目を待つ必要はありません」という、岡本真氏の巻頭言の一言は確かにそのとおりかと。全体として、1945年以前の戦争の経験者が現実にいなくなっていく、という状況下で、かつ戦争を知らない若い世代を拒絶しない形の戦争体験の継承がどのように可能か、という論点と、図書館等による戦争資料の収集と、組織化を通じた戦争資料を見える化していく取組みをどのように行なっていくことができるのか、という論点が絡み合う形で議論されている、という印象。

それと、水島久光「付記 デジタルアーカイブ化に向けた「レベル」別支援」(p.82-83)における、

「ある物品や文書資料を、「戦争」に関連づけて拾い上げる行為がなされて初めて、それらは「戦争関連資料」として認識されるのであり、その点において「目録」づくりは、行為遂行的(performative)なアクションであるということができる。」

という指摘は、戦争関連の資料に限らず、いわゆる主題書誌、専門書誌、参考書誌とは何なのか、ということを考える際に、重要なのではないだろうか。

また、正面からはあまり論じられていないが、歴史修正主義者の活躍が、出版においても猖獗を極める状況下において、いかに戦争資料を収集し、提示していくのか、という問題も背景にはあるように思う。歴史修正主義者(正確には修正ではなく、改変・捏造と言うべきだろうが…)に対して、地道に抵抗していくためにも、戦争資料の蓄積と組織化、そしてそれに基づく提供と共有は不可欠だろうが、だからこそ、攻撃対象となるリスクも伴う。また、特にサブカルチャーやSNSで歴史修正主義的な見方を先に身に付けてしまった人たちに対して、どのように蓄積された資料を提示していくのかは難しい課題だろう。間口を広くしつつ、資料への向合い方について、どのようにして考え直す契機を作り出すのか、という問いも絡んできそう。

こうした難しさに対峙していくためには、組織・機関を越えた横のつながりが必要で、その意味でも、現状をレポートし、課題を整理したこの特集の意味は大きいと思う。「展示」や「目録」という既存の手法をどのようにデジタル環境に組み込んでいくのかという面でも意欲的な議論が展開されているところもありがたい(例えば、椋本輔・上松大輝「戦争関連資料をつなぐメタデータ共有システムの構想」(p.84-93))。

あえていえば、日本社会が直接、間接に関わった1945年以降の戦争についても、ここで議論されているような方法で対応できるのかどうかが気になるところではあり。ただ、そのあたりは、責任編集者でもある水島久光氏の『戦争をいかに語り継ぐか 「映像」と「証言」から考える戦後史』NHK出版,2020.(NHKブックス No.1263)をまずは読んでから考えるべきなのだろう。

連載では、奈良県立図書情報館の乾聡一郎氏のインタビュー(「司書名鑑nol.31」)におけるイベントに対する考え方(「続けることが目的になるようなことがあったら、そのイベントの使命は終わったという考え」)が印象に残った。

また、猪谷千香氏による現代マンガ図書館の蔵書も集約された米沢嘉博記念図書館についてのレポート(「猪谷千香の図書館エスのグラフィーvol.17」)では、複写サービスを行なっているところに注目していて、言われてみると、確かにそれは、なぜ「図書館」なのか、という点で、重要であることに気付かされた。

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2021/09/13

『文献』(明治堂書店)第四号(昭和三年十一月)

久しぶりに昼間に少し時間が取れたので、神保町で古書店の平台を覗いたりしてふらふらと。

店の中までじっくり見て回ったわけでもないので、特段収穫というほどのものはなかったのだけど、明治堂書店の古書目録+古書関係エッセイ雑誌の『文献』第4号(昭和3年11月)を入手。結構面白かった。

後で確認したら、国立国会図書館所蔵本は布川文庫だった。ゆまに書房から1993年に復刻版(書物関係雑誌叢書 第16巻 (書誌書目シリーズ 34))も出ている。

表紙裏には、明治22年刊の『須多因氏講義』の広告。同書を創刊号に掲載したところ注文殺到、「今回当時の売買書肆の倉庫に残りしもの不思議にも震災の厄を免れて」入手できたので廉価でお薦めできると売り込んでいる。

タイトルページには、服部応賀『活論学門雀』初号上冊序文を引用。(同書は、早稲田大学所蔵本がデジタル化され、公開されている。)

以下、目次を若干の覚えとともに紹介しておく。

「元禄二年江戸の本屋(江戸図鑑綱目乾諸商人無類之分並本屋家書より)」ページ付けなし(2ページ)

※(メモ)近代に入っての書店、古書店の増加状況について、各種名簿類との比較での附記あり。

「スタチスチツク社沿革概要」ページ付けなし(1ページ)

※(メモ)「明治九年二月有志の士十余名「スタチスチツク」研究の為一社を興し杉享二君を推して社長となし称して表記学社と云ふ」とのこと。スタチスチツク社については、総務省統計局の「スタチスチツク雑誌」の紹介を参照のこと。

海岳堂主人(経済学博士)「先づ文献目録の蒐集から」p.1-3

※(メモ)研究に先立つ資料収集のノウハウについてのエッセイ。まずは文献目録を揃えるところから、という話。カードへの書抜きによる集めた情報の整理についても論じている。著者は誰なのだろう。

中川善之助「クランマーのことども」p.4-11

※(メモ)ヘンリー八世の離婚に免許を与えた僧侶Thomas Cranmerの事績と、関連書の収集についてのエッセイ。民法の専門家らしく、離婚法における重要人物として、クランマーについて言及している。英国オックスフォードに滞在していたようで、クランマーについて知るや否や、ゆかりの地を探し、著作を古書店に注文するなど大変活動的。「穂積先生の論文でその略伝を読んだ」の穂積先生は、穂積重遠か。

齊藤文蔵「近感四片」p.12-19

※(メモ)「維新史料蒐集の思出で」「南蛮史料展覧会」「初版購求の悲哀」「江戸城建築史料展覧会」のエッセイ4本。「維新史料…」は維新史料編纂事務局在籍時に資料収集をどのように行なったのかの回顧。体系的に収集した武鑑などの資料は、関東大震災で焼けてしまったらしい。

藤田徳松「参児制限論に関する書物二三」p.19-22

※(メモ)明治期の参児制限論に関する資料の紹介。

「編輯者のページ」p.23-24

※(メモ)「故宮崎博士の遺書」「岡本卯之助氏とその遺書」の2本。末尾に「T・M・記」とあり。「宮崎博士」は「前帝国大学法学部教授宮崎道三郎博士」のこと。「鎌倉時代の古文書を初め」とした和漢洋の珍籍を収集していたそうで、「過半母校研究室に納め」られたとのこと。おそらく、東京大学法学部法制史資料室所蔵コレクションの一部をなしているのでは。岡本卯之助は三井物産に勤務し、商学関連の資料を中心に美本を集めていたとのこと。

「新集古書販売目録 昭和三年九月、十月中蒐集」

※(メモ)エッセイ部分とページ建てが別で和書53ページ、洋書11ページあり。赤丸の書き入れがあり、旧蔵者が注文したか、注文する候補にした本がどんなものなのかがうかがえて、ちょっと面白い。なお、前項によれば、岡本卯之助旧蔵資料が、「商業史」の項に掲載されているとのこと。

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2021/09/12

Code4Lib JAPAN Conference 2021

2021年9月12日の、Code4Lib JAPAN Conference 2021の特別セッション、鼎談「『ビジョン2021-2025 国立国会図書館のデジタルシフト』からライブラリーの未来を考える」に登壇したので若干メモ。(プレゼン資料)。

大向一輝先生の「すべてがNDLになる」というキーワードから、Slackで皆さんが自分のNDL化を宣言するというダイナミックな展開で、びっくりしたけど、期待の大きさを改めて痛感。

地方議会の議事録等、自治体の公開情報や、教科書、Webコミックなど、一般的な出版物とは異なるルートで流通している「出版物」(Webでの公開含む)をどう保存し、アクセス保障をするのか、という問題がSlack上で展開されていたのも重要かと。

期待や影響が大きくなっている分、最後に、福島幸宏先生が拾ってくれたけど、NDLの創設時から続く理念とか、理想とかの重要性を改めて感じた。自分たちが邪悪にならないために、出発点を繰返し確認しないといけないのでは、という問題意識から、今回のプレゼンでは意図して歴史的な話を組み込んだんだけど、(どこまで伝わったのかは別にして)自分的にはやっぱり、そういう視点も必要だな、と何となく納得。

他のセッションも、可能な限り参加してみたのだけれど、色々な議論があって面白かった。デジタルアーカイブの定義を巡る議論(アンカンファレンスの一つ)は、いきなり定義から入るのではなくて、議論する対象の構成要素を分析した方が良いのかも、と後から思ったり。

ライトニングトークでは、二日目のGIGAスクールによる学校の変化が印象的だった。小学生たちはデジタル環境にあっという間に適応するんだなあ。

ただ、大向先生いうところの、二つのO(おせっかいとおっちょこちょい)を余計に発揮してしまい、若手の出番を奪ってしまったかも、というのが反省点。偉い人がひょいひょい出て来ちゃったら、口出しにくいよね……。申し訳ない。他のセッションではもっと大人しくしてれば良かった。

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2021/09/07

『現代の図書館』vol.59 no.2 (2021年6月) 特集「文字・フォント・タイポグラフィ」

2021年9月6日に手元に到着。目次は次のとおり。

雪嶋宏一「西洋における活字の形成」

(メモ)グーテンベルグの活字から、ニコラ・ジャンソンによるローマン体の成立までを中心に。

安形麻理「インキュナブラ研究における活字の分類」

(メモ)インキュナブラの活字分類と、主要ツールの紹介など。国立国会図書館の電子展示会「インキュナブラ 西洋印刷術の黎明」についてもちょっと言及あり。

山本政幸「エドワード・ジョンストンのロンドン地下鉄書体とその源流」

(メモ)エドワード・ジョンストン(Edward Johnston, 1872-1944)が設計したイギリスロンドンの地下鉄で使用されている書体や、ジョンストンが影響を受けた古写本などの書物について。モダンな書体の成立の背景に、アーツ&クラフツ運動がある、というのは面白い。

小宮山博史「欧米人による明朝体活字の開発と日本への伝来」

(メモ)明朝体活字のベースとなった、美華書館の漢字活字の日本への導入史を概説。

北本朝展「日本古典籍くずし字データセットとAIくずし字認識」

(メモ)AIくずし字認識は、KuroNet。どのようにしてくずし字認識が可能となってきたのかを概説。

正木香子「図書館で出会った書体と読書体験ー文字について考えることは言葉について考えること」

(メモ)実際の版面の抜粋図版を示しつつ、書体の読書体験への影響について語る。

木田泰夫・小林龍生・村田真「電子書籍における日本語表示環境と国際標準」

(メモ)漢字表記と文字コード、ディスレクシアへの対応などアクセシビリティ、日本語約物類の扱いという3つのテーマについて分担執筆。慶應義塾大学のAdvanced Publishing Laboratory及びその周辺における議論をまとめたものとのこと。

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2021/09/05

『図書館文化史研究』no.38(2021)

日本図書館文化史研究会の会誌の最新号が届いた。発行は日外アソシエーツ。以下目次。

  • 〈論文〉

    • 山本宗由「日本図書館分類の黎明期における音楽資料の分類法 —戦前の日本十進法分類(NDC)760を中心に—」

    (メモ)戦前期の音楽資料分類について、NDC以前、NDCに影響を与えた分類、NDCに分けて紹介、分析。

    • 小黒浩司「占領期図書館統制の研究 —映画篇—」

    (メモ)山口県防府市防府図書館に残された三哲文庫や業務資料に基づいて、占領期における図書館統制、特に映画フィルムの没収の実態を論じる。

    • 河井弘志「世紀転換 大学図書館司書職成立の時代 ーオットー・ハルトヴィッヒ小伝ー」

    (メモ)ドイツにおける大学図書館司書職制度確立に重要な役割を果たしたOtto Hartwig, 1830-1903の小伝。

  • 〈資料紹介〉

    • 鈴木宏宗「『図書総目録 昭和二年七月現在』北平田村図書館」

    (メモ)山形県の北平田村図書館の蔵書目録の翻刻。戦前期の村立の小規模図書館の蔵書構成の事例として紹介。講談が「伝記」だったり、海外文学が「雑書」だったりするのが興味深い。

    • 方承 編「『図書館史研究』第1〜12号 『図書館文化史研究』第13〜37号(1984〜2020年)総分類目次」

    (メモ)日本関係は時代別、海外関係は地域別に分け、『図書館文化史研究』及び前身の『図書館史研究』掲載文献を分類。こうして見ると案外海外ネタも多い。

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2021/09/04

吉井文美「遺跡を尋ねて 第V期第4回 〈中国天津〉旧開灤鉱務総局の建物」学士会会報 no.950(2021-V)p.101-106.

1920年竣工の、中国天津における旧イギリス租界の中心に位置する建物についての紹介。とはいえ、むしろ、そこで活動した、開灤鉱務総局(Kailan Mining Administration)についての概説となっている。

開灤鉱務総局は、河北省唐山市にある開灤炭坑を経営していた組織で、形式的には英中両国による経営だったが、実質英国が経営する石炭会社だったとのこと。石炭の大口購入者が日本企業(日本製鉄、日本鋼管など)であったことが特徴で、1935年以降、冀東防共自治政府(のちに中華民国臨時政府)の実質支配下にあっても、イギリス人たちによる経営が継続し、英国外務省との微妙な関係下においても、日本への石炭販売を続け、1941年の日本の対英開戦後も、辞職しようとしたイギリス人たちが、しばらくの間(1942年6月ごろ)日本側の希望で残留して経営を続けたことなど、まったく知らない話が並んでいた。

なお、著者は1930年代に開灤鉱務総局の支配人であったネースン(E.J. Nathan)が残し、現在オックスフォード大学ボドリアン図書館の所蔵となっているNathan Papersを中心に研究をされてきたとのこと。中国現地にも史料は残されている模様だが、新型コロナウイルスの影響で調査が困難となってしまった事情にも言及されている。

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